宇宙の危険な自然災害「スーパーフレア」
太陽の周囲には、コロナと呼ばれるプラズマの大気が存在しています。
これは太陽表面から離れた、外側の大気ですが、太陽の強い磁場に拘束されて、閉じ込められた状態になっています。
しかし、太陽の表面で「フレア」と呼ばれる爆発噴火が起こったとき、この磁場の一部が解かれて、閉じ込められていたコロナの一部が宇宙空間へ放出されます。
これをコロナ質量放出(CME)といい、このとき有害な放射線とともに10億トン近い太陽物質が時速数百万キロという速度で周辺の惑星まで飛んできます。
これが地球を直撃した場合、人工衛星だけでなく、地表の電子機器や送電網、通信インフラにまで壊滅的な打撃を受けることになります。
これは「太陽嵐」としても知られている大災害です。
そしてこの現象の中でも特に大規模で危険なものを「スーパーフレア」と呼びます。これがもし私たちの太陽で起きた際、人類が何の対策もしていなければ、地球の人類文明は壊滅する可能性が高いと考えられています。
当然、そんなスーパーフレアは、人類史上では、まだ一度も太陽から観測されたことはありません。
ただ、太陽以外の恒星では時たま観測されている現象で、私たちの太陽でも今後絶対起こらないという保証はありません。
スーパーフレアはいわば富士山の噴火などと同じように、現在は長い休眠期間にあるだけで、いつ起こっても不思議のない大災害なのです。
そのため、天文学者はスーパーフレアについて、事前にもっと詳しく知っておきたいと考えています。
とはいえ、地震や火山噴火のようなローカルな災害と異なり、スーパーフレアは一度でも起きれば人類が壊滅するほどの大災害です。
私たちの太陽からそれを観測しようとしても、あまり意味はありません。
そこで、天文学者は、太陽によく似た星(太陽型星)からこれを観測しようと監視を行っています。
太陽型星という種類を、もう少し厳密に表現するなら、「自転の遅いG型主系列星」という表現になります。
太陽は宇宙ではG型主系列星と呼ばれるタイプの天体グループに含まれ、自転周期が10日より長い、比較的自転の遅い星です。
他天体のスーパーフレアは、主に自転周期が10日以内の自転が早い星から見つかるものが多数を占めています。
つまり、私たちの太陽でも発生する可能性のあるスーパーフレアを調べようとした場合、観測対象は「自転の遅いG型主系列星」が望ましいということになるのです。
そこで、今回国立天文台などの研究グループは、この候補として最適な、若い頃の太陽によく似た星「りゅう座EK星(EK Draconis)」を長期間監視観測していたのです。
そして、太陽型星では初めてとなる、スーパーフレアの可視光線での分光観測を成功させたのです。