YOLO開発への道
子ども主体のデザインに向けて
ロボットのデザインを子ども主体で行うことは非常に困難です。本来、ロボットを人間の要望通りに設計することは、簡単なことではありません。
ロボットを設計する際には、想定される使用者から、開発段階で具体的なフィードバックを得ることが不可欠です。
しかし、ユーザーテストができる状態までロボットを仕上げてしまうと、すでに変更できるデザインや仕様が限られてしまいます。
そのため、デザインが固まる前の早い段階からをフィードバックを取り入れるためには、インタビューやアンケート、画像やアニメーションを見てもらうといった方法をとるしかないのです。
そして今回は子どもが相手なので、このアンケートすらも困難です。
研究者たちはそのなかで、どのように子どもたちと共同で設計を進められたのでしょうか。
ペーパーキューブの遊びを観察
研究のスタート地点は折り紙の立方体でした。一般に子どものおもちゃには幾何学的なものが多い、という理由から研究者らは折り紙を参考にしたそう。
ペーパーキューブで遊んでいる子どもたちの様子を観察することにより、YOLOのデザインや振る舞いの改良を柔軟に進められたのです。
例えば、子どもたちがキューブをつかむ際、端を丸くして使っていたことから、角ばったものでなく丸みを帯びたデザインが採用されました。
また、観察をする中で子どもたちはペーパーキューブに様々な個性を持たせました。
キャラクターに見立て、物語を生み出していったのです。不機嫌な人、シャイな人…といった様子です。
個性をキューブに持たせて遊ぶ様子を参考に、YOLOにもパーソナリティをもった振る舞いをさせました。
不機嫌というパーソナリティなら、YOLOは素早く振幅の大きい動きをします。
シャイであれば、ゆっくり、振幅も小さく、こそこそと動きます。
そういった観察と反映を繰り返し、それに対する改良とテストが重ねられ、現在のYOLOがようやく完成するに至ったのです。