子どもがデザインしたロボYOLO
子どもがデザインしたロボYOLO / Credit: [HRI 2020] YOLO – Your Own Living Object
education

子どもたちと「ゼロからデザインした」ソーシャルロボットYOLO

2022.01.04 Tuesday

上の写真はYOLOというソーシャルロボットです。YOLOはyour own living object の頭文字です。

人間と何らかのコミュニケーションが可能な新世代ロボットをソーシャルロボットといい、YOLOは米ワシントン大学(University of Washington)のパトリシア・アルベス=オリヴェイラ氏によって、子どもの創造性を刺激する目的で開発されました。

YOLOは「ミラーリング」と「コントラスト」という2つの動作により、遊びながら思考力を発達させる工夫がなされています。

ユニークな見た目ですが、これは実際に142名の子どもたちが設計の過程に関わり、4年間にわたってデザインされたものです。

研究は、2021年3月8日に出版された『HRI ’21: Proceedings of the 2021 ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction』に掲載され、HRI ’21のデザイントラックにおいて最優秀論文賞を受賞しています。

Children as Social Robot Designers What happens when you let kids design their own social robot from scratch https://spectrum.ieee.org/social-robots-children YOLO – Your Own Living Object https://doi.org/10.1145/3371382.3378395 [HRI 2021] Children as Robot Designers https://www.youtube.com/watch?v=E2trLGclTc8 [HRI 2020] YOLO – Your Own Living Object https://www.youtube.com/watch?v=e-K3J5UZ9M4
Children as Robot Designers https://doi.org/10.1145/3434073.3444650

YOLO開発への道

子ども主体のデザインに向けて

YOLOで遊ぶ子どもたち
YOLOで遊ぶ子どもたち / Credit: [HRI 2020] YOLO – Your Own Living Object
ロボットのデザインを子ども主体で行うことは非常に困難です。

本来、ロボットを人間の要望通りに設計することは、簡単なことではありません。

ロボットを設計する際には、想定される使用者から、開発段階で具体的なフィードバックを得ることが不可欠です。

しかし、ユーザーテストができる状態までロボットを仕上げてしまうと、すでに変更できるデザインや仕様が限られてしまいます。

そのため、デザインが固まる前の早い段階からをフィードバックを取り入れるためには、インタビューやアンケート、画像やアニメーションを見てもらうといった方法をとるしかないのです。

そして今回は子どもが相手なので、このアンケートすらも困難です。

研究者たちはそのなかで、どのように子どもたちと共同で設計を進められたのでしょうか。

ペーパーキューブの遊びを観察

YOLOは立方体の折り紙から発想された
YOLOは立方体の折り紙から発想された / Credit: [HRI 2021] Children as Robot Designers
研究のスタート地点は折り紙の立方体でした。

一般に子どものおもちゃには幾何学的なものが多い、という理由から研究者らは折り紙を参考にしたそう。

ペーパーキューブで遊んでいる子どもたちの様子を観察することにより、YOLOのデザインや振る舞いの改良を柔軟に進められたのです。

例えば、子どもたちがキューブをつかむ際、端を丸くして使っていたことから、角ばったものでなく丸みを帯びたデザインが採用されました。

また、観察をする中で子どもたちはペーパーキューブに様々な個性を持たせました。

キャラクターに見立て、物語を生み出していったのです。不機嫌な人、シャイな人…といった様子です。

個性をキューブに持たせて遊ぶ様子を参考に、YOLOにもパーソナリティをもった振る舞いをさせました。

不機嫌というパーソナリティなら、YOLOは素早く振幅の大きい動きをします。

シャイであれば、ゆっくり、振幅も小さく、こそこそと動きます。

そういった観察と反映を繰り返し、それに対する改良とテストが重ねられ、現在のYOLOがようやく完成するに至ったのです。

次ページYOLOの遊び方と教育的な効果

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