電流と磁場がお互いを支え合う
物質を加熱していくと光を放つようになります。
たとえばキャンプで炭焼きバーベキューをすると、熱した炭が赤く輝くのに気づくと思います。
なぜ、炭は輝くのでしょう?
先ほども述べたように、温度とは分子や原子の運動エネルギーです。
物質を熱すると、原子を構成する電子も激しく運動するようになります。電子が激しく運動するとそこには電流が生まれます。
そして電流が流れるとその周囲には磁場が発生し、これらの作用は電磁波となって空間を広がっていきます。
私たちが光と呼ぶものは、可視波長の電磁波のことなので、熱した物質は光を放つようになるわけです。
コイルを敷き詰めた空間で、温度を上げたり下げたりする実験をした場合、物質を熱したときは、電子はめちゃくちゃに激しく動き回るため、かなり乱雑な電磁波が生じます。
これは炭が光を放っているのと同じ状況です。
しかし、逆に物質を冷やしていった場合、どうなるでしょうか?
このとき、非常に興味深いことが起きるです。
コイル内の電子の熱エネルギーが下がり、周囲の電磁場のエネルギー総和の方が高くなっていくことで、コイルに発生した電流の作る磁場が、さらにコイルに電流を発生させ、お互いを支え合った状態が生まれるのです。
これが安定すると、周囲の電磁波が止まった波となり、物質と周囲の空間を含めた相転移が起きるのです。
この変化が超放射相転移と呼ばれます。
こうした現象が存在することは、1973年に理論的に予言されていました。
しかし、現在に至るまで現実に観測されたことはありませんでした。
けれど今回、ついに超放射相転移を起こす磁性体が発見されたのです。