「アルカリ加水分解」により有機物をゆっくり分解
日本では火葬が一般的ですが、遺体を燃やして灰にするには莫大なエネルギーがかかり、年間で数百万トンの二酸化炭素を排出していると言われます。
一方のアクアメーションは、棺に収めた遺体を火ではなく、アルカリ加水分解によって処理します。
火葬に代わる環境に優しい方法として注目されており、加熱したアルカリ溶液で遺体を分解し、骨格のみを残すのです。
ちなみに、アクアメーション(Aquamation)とは、水(Aqua)と火葬(Cremation)を合わせた造語であり、「火なし火葬(flameless cremation)」などとも呼ばれています。
火葬より環境に優しく、遺骨も多く残る
アルカリ加水分解による遺体処理のプロセスは以下の通りです。
まず、故人の遺体を水と水酸化カリウムの混合液で満たした加圧容器の中に入れ、約90~150℃に加熱します。
容器内の圧力が上がっているため、加熱しても溶液は沸騰することなく、数時間かけて有機物を穏やかに分解してくれます。
加水分解により、骨以外の有機物はすべて液化されます。
残った遺骨はその後、専用のオーブンで乾燥させて白い粉にし、骨壷に入れて親族のもとに贈られます。
米バイオレスポンス・ソリューションズ(Bio-Response Solutions)社によると、このプロセスは「火葬に比べて90%少ないエネルギーである上、有害な温室効果ガスも排出しない」とのこと。
さらに、火葬の場合より32%も多く遺骨を残すことが可能です。
また、処理後に残った液体は、塩類やアミノ酸を含む有機物質の無菌混合体であり、肥料として使用したり、中和して安全に水路に放流できるといいます。
先日には、昨年末の12月26日に亡くなった、アパルトヘイト反対運動でノーベル平和賞を受賞した南アフリカの聖公会司祭、デズモンド・ムピロ・ツツ(Desmond Mpilo Tutu)氏が、自身の葬儀にアクアメーションを希望したことが明らかになりました。
ツツIPトラストとデズモンド&リア・ツツ・レガシー財団は「ツツ氏は自らの葬儀に対する希望が非常に明確でした」と発表。
「派手な演出や贅沢な出費を望んでいませんでした。棺は最も安いもので、大聖堂に飾る花は家族からのカーネーションの花束だけにしてほしいということでした」と伝えています。
このようにテクノロジーの発達に伴って、葬儀の方法もどんどん多様化しつつあります。
温暖化の懸念もあり、環境に優しい葬儀の仕方が今後も次々と開発されるかもしれません。
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