ポニーサイズだが、小さいなりに利点もあった
研究チームは今回、イングランドの古城や中世の馬の墓地を含む171の遺跡から出土した、4〜17世紀までの約2000頭におよぶ馬の骨を分析。
それと並行して、歴史的記録や騎士に関する架空の物語についても調査しました。
その結果、理想と現実は大きくかけ離れたものであることが判明しています。
調査によると、戦争に駆り出された軍用馬の大半は、現代のポニーの最大身長である14.2ハンド(147.3センチ)以下しかなかったのです。
最も大きかったのはノルマン・コンクエスト時代(1066年)の馬ですが、それでも15ハンド(152.4センチ)しかありませんでした。
これは、現代の小型軽乗馬と同じくらいのサイズです。
研究主任のアラン・アウトラム(Alan Outram)氏は、次のように話します。
「歴史的記録や物語などの大衆文化では、軍馬は大型に描かれることがほとんどでした。しかし、真実は物語に描かれたのとは大きく違っていました。
中世の馬は驚くほど小さく、私たちがフィクション作品に見るようなサイズの馬はほぼ存在しなかったのです」
その一方で、氏は「中世の騎士にとって馬の大きさがすべてではないことは明らか」と指摘します。
特に、軍隊がすばやく退却する際や、長距離をスピーディーに移動するには、大型で鈍重な馬よりも小型の馬の方が身軽で機転が利いたと考えられるのです。
またチームは今回の結果について、「中世の馬の飼育者たちが膨大な時間や資金、労力を投入しなかったことを意味するものではない」と強く主張しています。
「13世紀と14世紀には、特に王室の馬の血統は驚くべきネットワークでした。彼らは人間よりも馬にずっと多くのお金を費やしていたのです」とアウトラム氏は述べています。
実はこの話、日本の戦国時代にも当てはまります。
時代劇などでよく立派な軍馬が登場しますが、あれはすべて近代になって欧米から入ってきたサラブレッドたちで、日本の在来馬ではありません。
これまでの研究ですでに、戦国時代の武将たちはもっと小さな馬を愛用していたことが分かっています。
中世イギリスの騎士も日本の戦国武将も、映画やゲームで描かれるほどカッコいいものではなかったかもしれません。
研究チームは次なるステップとして、ウェストミンスターにある遺跡の分析、馬の鎧や骨のDNA鑑定など、中世の軍馬についてより詳しい情報を得るための研究を予定しているとのことです。