原因は「地磁気」と「潮流」の変化か
本研究では、1970年から2016年の世界的なサメ襲撃データと、各襲撃時における月の満ち欠けを比較分析。
その結果、月の照度が50%以上から満月のときに、いわれのないサメの襲撃が明らかに増加していることが示されました。
反対に、月の照度が40%以下になると、襲撃件数は平均値より低くなったとのこと。
しかし、この現象の原因を月の照度に帰することはできません。
サメ襲撃の大半は白昼に起こるため、単純に明るさの問題ではないと考えられるからです。
むしろ研究チームは、月の照度よりも、月の満ち欠けに影響される2つの要因:地磁気と潮流が関係しているのではないかと主張します。
地磁気の大部分は、地球内部の外核で発生します。
外核の主成分は「鉄」であり、下側からの高温と上側からの圧力によって溶融状態となっています。
この電気を流しやすい鉄の流体運動によって生じる電流が地磁気を発生しているとされます。
そして、地磁気は満月に関連して活動が増減し、さらに、サメは電磁刺激を感知して行動を変えることが知られています。
つまり、満月による地磁気の動きの変化にともない、サメの移動習性も変わっていると予想されるのです。
それから月の満ち欠けは、ご存知の通り、海の潮流にも多大な影響を与えます。
この波の変化に加えて、月明かりがサメの視認性を向上させ、移動範囲が変化し、人間と遭遇する可能性の高い地域まで進出しているのかもしれません。
その一方で、研究チームは、満月をサメ襲撃の決定的な危険因子として使用しないよう警告しています。
今回の研究は、過去50年分のデータに基づいているのみで、サンプル数が限られています。
それに地磁気と潮流の変化が、本当に襲撃増加の原因となっているかは証明できていません。
しかしチームは、本研究について「サメの行動をより深く理解することに貢献し、将来のリスク管理に役立つ可能性がある」としています。
今後の研究で、月の照度に加えて各地方や海域の環境条件も考慮できれば、サメ襲撃の要因とリスク予測の両方が改善されると見ています。
ちなみに、満月に獰猛になるのはサメだけではありません。
イギリスにおける先行研究(PMC, 2000)では、1997〜99年の間に動物に咬まれたとして救急診療所に搬送された患者を調べたところ、満月の間に襲撃が著しく増加することが分かっています。
やはり月には、生物の行動に影響を与える妖しい力が秘められているようです。