前方後円墳は太陽の昇る方向を向いていた
前方後円墳は太陽の昇る方向を向いていた / Credit: ja.wikipedia
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前方後円墳は「太陽の昇る」方向を向いているとイタリアの研究チームが発見

2022.01.22 Saturday

日本列島には何百、何千といった墳墓が点在しますが、その中で鍵穴のような形をしたものを前方後円墳と呼びます。

日本の古墳の代表的な形式であり、おもに3世紀中頃から7世紀初めにかけて建造されました。

一方、周囲への立ち入りが禁止されていることから、あまり研究が進んでいないのも事実です。

しかしこのほど、ミラノ工科大学(Polytechnic University of Milan・伊)により、新たな事実が判明しました。

それによると、前方後円墳の大半は、太陽や月が昇る方向に向いていることがわかったのです。

研究は、1月14日付で学術誌『Remote Sensing』に掲載されています。

The secrets of ancient Japanese tombs revealed: Satellite images show keyhole-shaped burials all face towards the arc of the rising sun, the Goddess Amaterasu that emperors linked to the mythical origin of their dynasty https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10423937/Ancient-Japanese-tombs-face-arc-rising-sun-study-shows.html
The Orientation of the Kofun Tombs https://www.mdpi.com/2072-4292/14/2/377#

 太陽が昇る方向に向いていた

前方後円墳は日本に広く分布しており、その数は少なくとも4800基、最大で5200基に達すると言われています。

中でも大阪にある大山古墳(だいせんこふん)は、墳の全長が486m、高さ35.8mと、地球上で最も巨大な墳墓の一つです。

第16代天皇である仁徳(にんとく)天皇のものとされており、2019年にはユネスコ世界遺産にも登録されました。

大山古墳
大山古墳 / Credit: ja.wikipedia

その数の多さに反して、前方後円墳について書かれた記録や資料はほとんどなく、その起源や詳細を明らかにすることが非常に難しくなっています。

また、大きな古墳群は、伝統的な墓であるため、周囲への立ち入りが禁止されていて、発掘調査もままなりません

さらに、古墳の多くでは、外縁部がフェンスで厳重に囲まれており、敷地の外周にすら入ることができません。

そのため、古墳のサイズや高さ、向きなどを正確に計測することができないのです。

日本の古墳に興味を持つ海外の研究者も、なかなか立ち入った調査は許可してもらえません。

それならばとミラノ工科大の研究チームは、リモートセンシング調査の強力なツールである高解像度の衛星画像を使用することにしました。

「陸がダメなら空から」という作戦です。

チームは、日本にある100基以上の前方後円墳を対象に、上空から見た衛星画像を分析して、古墳と周囲の土地、空との位置関係を調査しました。

調査対象とした前方後円墳のある場所
調査対象とした前方後円墳のある場所 / Credit: Arianna Picotti et al., Remote Sensing(2022)

その結果、前方後円墳の多くは、太陽と月の登る方向に向いていることが判明したのです。

具体的には、古墳の入り口から始まる通路が、太陽が昇って沈んでいくライン(弧)と同じ方向になっていたのです。

赤線が前面。それに垂直に伸びるのが通路方向
赤線が前面。それに垂直に伸びるのが通路方向 / Credit: Arianna Picotti et al., Remote Sensing(2022)
各古墳の前面の方位の分布(青線)、太陽の昇る方向に向いているものが多いことがわかる
各古墳の前面の方位の分布(青線)、太陽の昇る方向に向いているものが多いことがわかる / Credit: Arianna Picotti et al., Remote Sensing(2022)

こうすることで、一年中毎日、古墳の回廊に日が射し込むことになります。

このような向きに建てられた目的は、正確には定かでありません。

しかし、研究チームは「これは偶然ではなく、日本の皇室の伝統や、天照大神(あまてらすおおみかみ)の直系の子孫と考えられる天皇の神話的起源と一致している」と指摘します。

天照大神は、皇室の祖とされる神であり、太陽神および巫女の性格をあわせ持ちます。

また日本神話では、天照大神から数えて第5代目の子孫に、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)、すなわち初代天皇である神武天皇がいます。

古墳には天皇を埋葬する陵墓などもあることから、天照大神と結びつく太陽の動きを意識して、古墳の向きを設計したのかもしれません。

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