ルワンダ虐殺の影響が遺伝子に刻まれ子孫に伝わっていた!
1994年、アフリカのルワンダで多数派民族(フツ族)によって、少数派民族(ツチ族)が虐殺されるジェノサイドが発生しました。
虐殺は周到に計画されたものであり、事前に襲撃対象のリストアップも行われ、わずか100日間のうちに、ルワンダの総人口730万人のうち約117万4000人が殺害されました。
ルワンダ虐殺の特徴として、虐殺対象に一般市民が数多く含まれていた点があげられます。
虐殺の前には「ツチ族はゴキブリ」など、過激なヘイトスピーチがラジオを通して頻繁に放送されており、虐殺にはフツ族男性の14~17%が参加したと報告されています。
人類愛を説く神父やシスターでさえ、避難場所を求めて教会に集まっていたツチ族を保護するどころか、教会をブルドーザーで破壊させ、逃げるツチ族を配下に射殺するよう命じていました。
その結果、国内のツチ族の70%とピグミー族の30%、そして虐殺に参加しなかった穏健派のフツ族の多数が「裏切者」として殺害されました。
ユニセフの調査によると、標的にされた少数民族では、最大で50万人の女性が強姦され、80%の子供が家族の死を経験、90%が自分も死ぬと思っていたことが報告されています。
また虐殺によって膨大な数の人々がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しました。
さらに虐殺から時間が経過すると、虐殺を生き延びた人々の子供にも、精神的な問題が多く見られることがわかってきました。
これまでは、親の精神的な問題が子育てに影響し、子供の精神の健全さを損なったと考えられていました。
しかし近年の研究により、マウスなど人間と同じ哺乳類にも、親の経験が子供に遺伝する現象「エピジェネティック」が報告されるようになっています。
そこで今回、ルワンダ大学の研究者たちは、大虐殺を経験した母親と、大虐殺のときに子宮内部にいた子供の血液サンプル(白血球由来のDNA)を分析しました。
結果、母親の血中DNAの24カ所と、子供の血中DNAの16カ所に、変化が起きていたのです。
中でも、虐殺時に子宮内部にいた子供では、精神異常や早老症などにかかわる3つの領域(BCOR・PRDM8・VWDE)の遺伝子が不活性化(メチル化)している傾向が強いことが示されました。
この結果は、虐殺の影響が子宮の内部にいた子供の遺伝子に変化をおよぼし、いくつかの遺伝子の働きが変化してしまったことを示します。
もしかしたら人間にも、マウスの慢性社会的敗北ストレスの遺伝と同じような仕組みが存在するのかもしれません。
問題は、遺伝子に起きた影響がどこまで続くかです。