科学者たちはリアルな恐怖体験を求めている
作家の京極夏彦は、「読者を感動させることは比較的簡単にできるが、本気で怖がらせることは難しい」と語ったそうです。
実際、この問題は恐怖の影響の1つである「闘争・逃走反応」について調査する研究者たちを悩ませています。
疑似的な恐怖体験では、人間の体に生じる本当の影響をうまく引き出せません。
かといって、人間に命の危険を感じさせたり、身体的・精神的苦痛を与えたりする実験は、倫理的に許されるはずもありません。
「嘘または実験だと分かっている」被験者が、命の危険を感じるほど怖がることはまずないのです。
つまり、人間の恐怖に対する「闘争・逃走反応」を高い精度で調べるには、倫理的かつリアルな恐怖体験が必要なのです。
そこで今回、実験会場として利用されたのが米カリフォルニア州にオープンした「17th Door Haunted House」です。
お化け屋敷「17th Door Haunted House」は、さまざまな恐怖を体験できる17部屋で構成されており、「窒息」「迫る対向車」「銃殺」などを模した没入感のある非常にリアルな体験が可能。
そのため、このお化け屋敷のレビューには、多くの人が「これまでで最も強烈なお化け屋敷だ」と評しています。
研究チームも、「ここで経験できる恐怖は、アメリカで倫理的に許されている実験よりも、はるかに苦痛を与えるものだった」と述べました。
学生たちがお化け屋敷に行きたかっただけの可能性もありますが、これはまさに人間の闘争・逃走反応を調べるのにピッタリの場所です。
そんなわけでカリフォルニア工科大学の研究チームは、人間の恐怖に関する実験をこのお化け屋敷で敢行したのです。
では、実験の結果はどうなったのでしょうか?