リングの外縁に「祝福」の祈祷 内側に「病魔よけ」の呪文
アマチュア探知家のウィリアム・ノードホフ(William Nordhoff)氏は、2021年3月、ウィルトシャーにある村ピュージー・ヴェイルの畑で金属探知をしていたところ、あるポイントで反応があったという。
最初は取るに足りない鉛のかけらだと思いましたが、掘り起こしてみると「金色に輝く光が私を見つめていた」と話します。
その金色の物体はかなり小さく、直径が2.4cm、重さは5.77gしかありませんでした。
中央に剣のピン留めのようなものがあり、リングには外縁と内縁の両方に文字が刻まれていました。
「あまりのショックに腰を抜かしてしまいました」とノードホフ氏は言います。
「しばらくの間、その場に座り込んで呆然と見つめていたような気がします。
同じ型のタリスマンは見たことがありますが、これほど多くの文字が記されたものは経験がなく、すぐに特別なものと分かりました」
氏はただちに地元当局に報告。タリスマンは専門家のもとに引き取られ、分析にかけられました。
その結果、タリスマンの製造年代は1150年から1350年の間と判明し、内容物の分析から、本物の金で作られていることが確認されています。
また専門家らは、このタリスマンが”宗教的な意味合いを持った遺物”であることを突き止めました。
リングの外縁に刻まれた文字を調べたところ、その内容はラテン語で刻まれたキリスト教の祈りと祝福であることが特定されています。
それは次のようなメッセージです。
「恵みに満ちたマリアよ、主は汝と共におられる。汝は女のうちで祝福され、胎内の御子イエスも祝福される。アーメン」
これは、ルカによる福音書に見られるアヴェ・マリアの祈祷文の一節です。
さらに、リングの内縁の文字は、ラテン語でなくヘブライ語と判明しました。
報告によると、これらは魔力を持つ文字と見なされており、タリスマンの使用者を病魔から守る魔除けの一種となっていた、と説明されています。
このタリスマンは装飾品としてはブローチであったと考えられ、制作年代を考慮すると、1350年頃イングランドを含むヨーロッパ世界を襲った悪名高いペスト(黒死病)の流行に合わせて作られた可能性があると推測されています。
しかし、この品の年代判定は現状それほど正確なものではないため、ペスト流行以前に作られていた可能性も残っています。もしかするとペスト避けとは別の目的があったのかもしれません。
専門家は「タリスマンは非常に小さいため、文字を刻んだ人は、金属表面の細かな加工に熟練した人物であったろう」と付け加えています。
こちらは、タリスマンを持つノードホフ氏です。
He found a unique brooch from the medieval times that was recently declared treasure. https://t.co/lCQCNVSRVn pic.twitter.com/hLOyPMefnj
— Metal_Detector_Universe (@detector_mike) January 29, 2022
ノードホフ氏(49)はイギリス陸軍に10年間所属し、ウィルトシャーに駐在したのち、現在は軍事関係の企業に務めています。
そのかたわら、2017年から金属探知を始め、以来、いくつかの遺物を発見してきたという。
しかし今回のタリスマンは、氏にとって最大かつ歴史的な発見となりました。
この黄金のタリスマンは近々、地元のウィルトシャー博物館に展示され、一般公開される予定です
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