人工雪の利用と将来の課題
北京オリンピックの人工雪は、主にイタリアの企業「TechnoAlpin」によってつくられました。
コースを完成させるには、少なくとも120万立方メートルの人工雪が必要だと言われています。
その膨大な量は、同社の提供する300機以上の人工降雪機によって生み出されました。
ちなみに人工雪と天然雪では、組成がいくらか異なります。
人工雪は天然雪に比べて、含まれている空気の割合が少ないので、どうしても硬くなってしまいます。
そのため、転倒した際のダメージが大きいというデメリットがあるようです。
しかし人工雪ならではのメリットもあります。
世界中どこでも、ほぼ同じ条件の雪をつくりだすことができるのです。
逆に天然雪だと、そうはいきません。
天然雪の特徴は、天候に大きく左右されてしまうからです。
たとえば、場所やタイミングによって、べったりと湿った雪になることもあれば、さらさらとしたパウダースノーになることもあります。
スキーなどの競技においては、滑りに大きな違いをもたらすでしょう。
また将来を考えると、私たちは好みにかかわらず、オリンピックで人工雪を選択せざるをえないかもしれません。
2022年1月にオンラインで公開された論文(Current Issues in Tourism, 2022)によると、「過去半世紀に冬季オリンピックを開催した21都市のうち、今世紀末までにウィンタースポーツに適した気候を維持しているのは、1カ所だけ」だというのです。
地球温暖化による影響は大きく、ほとんどの国が人工雪に頼らなければならなくなるかもしれません。
今回のオリンピックで話題になった人工雪は、世界中の人々が抱える将来の問題でもありました。
冬季オリンピックを楽しみ続けるためにも、地球温暖化の問題を見逃すことはできないのです。