追跡装置を甲羅につけたアオウミガメの「ティリー」
追跡装置を甲羅につけたアオウミガメの「ティリー」 / Credit: Christian Miller/Cairns Turtle Rehabilitation Centre
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ウミガメが「トンガ大噴火」を事前に予知していた?!

2022.02.14 Monday

2022年1月15日、南太平洋に浮かぶトンガ諸島で、海底火山(フンガ・トンガ =フンガ・ハアパイ)が大噴火する衝撃的なニュースが報じられました。

これは世界中の人々に大変なショックを与えましたが、その裏で、非常に興味深い出来事が起こっていたようです。

ケアンズ・タートル・リハビリテーション・センター(CTRC・豪)によると、1匹のウミガメが火山の噴火を事前に予知して、泳ぐ方向を転換し、難を逃れていたというのです。

一体どういうことなのか、以下で詳しく見ていきましょう。

Tilly The Sea Turtle Knew About Tonga Eruption Before It Happened https://www.iflscience.com/plants-and-animals/tilly-the-sea-turtle-knew-about-tonga-eruption-before-it-happened/ Turtle’s U-turn days before Tongan volcanic eruption captured by satellite imagery https://www.abc.net.au/news/2022-02-07/tilly-the-turtle-u-turn-before-tongan-volcano/100809656

ウミガメに「噴火の予知能力」があった⁈

CTRCは遡ること3年前、浜辺の巣から出るのに失敗し、死ぬ寸前にあった孵化直後のアオウミガメ2匹を救助しました。

彼らはティリー(Tilly)サミー(Sammy)と名付けられ、同センターで保護されることに。

ウミガメは少なくとも20歳になるまで性別は確認できないため、オスかメスかはわかっていません。

CTRCのジェニファー・ギルバート(Jennifer Gilbert)氏いわく、「このペアが生き残れるかどうかはしばらく微妙だった」そうですが、献身的な世話の甲斐もあって、2匹とも無事に成長しています。

救助されたウミガメは普通、体長45cmに達すると野生に戻されますが、今回はCOVID-19の影響もあり、ティリーとサミーは同センターの保護下に置かれたままでした。

保護下で成長したティリー
保護下で成長したティリー / Credit: Christian Miller/Cairns Turtle Rehabilitation Centre

2匹が3歳になった今年のタイミングで、CTRCの研究チームは、甲羅に追跡装置を取り付けて、移動ルートを記録する調査を開始しました。

というのも、ウミガメは幼年を浅瀬で過ごした後、大陸棚の方に向かい、5〜10歳になるまで海岸には近づきません。

この5年間は「失われた期間(Lost years)」と呼ばれ、そのときウミガメが何をしているのかよくわかっていないのです。

チームは、ティリーとサミーがその空白を埋めてくれると考えました。

調査のために海に放されるティリー
調査のために海に放されるティリー / Credit: Christian Miller/Cairns Turtle Rehabilitation Centre

オーストラリア沖で2匹を放った10日後、残念ながらサミーの追跡装置の信号が消え、居場所を見失ってしまいました。

原因は機器の故障か、サメとの不運な遭遇と見られます。

その一方で、ティリーは東方向へまっすぐ旅を続け、47日間で1867kmを移動しました。

チームは当初、エサも豊富なグレートバリアリーフの周りをうろつくと予想していましたが、何の迷いもなく数千kmも直進する行動にとても驚いた、といいます。

ところが1月15日になって、ティリーは唐突に180度向きを変えて、元来た方向に戻り始めたのです。

トンガの大噴火が起きたのはその直後でした。

わざわざ長い距離を移動したあとで、何の理由もなく引き返すなんてことがあるでしょうか。

ギルバート氏は次のように話します。

「確かに、ティリーが噴火を予知したと断定するのは、憶測にすぎません。しかし、ティリーは明らかに何らかの異変を感じ取っていました。

動物たちが、地震や津波の予兆を感じて、危険域から逃げ出す例はよく知られています。

ティリーも噴火前の振動を察知したのかもしれません」

ティリーの追跡記録。1月15日の噴火直前にルートが急転
ティリーの追跡記録。1月15日の噴火直前にルートが急転 / Credit: Citizens of the Great Barrier Reef

それを支持するかのように、ティリーがグレートバリアリーフに戻ろうとしたとき、クイーンズランド州北部で小さな地震が発生しました。

被害を与えるほどの規模ではなかったものの、ティリーはまたその直前に進路を変えていたのです。

これまでの研究で、クジラやイルカ、アザラシ、そしてヤギにまで、地震の予知能力があることが知られています。

「同じ能力はウミガメでは知られていませんが、今回の観測論文を近々発表するつもりです」とギルバート氏は話しました。

ティリーは現在、73日間で約3000kmを踏破したあと、クイーンズランド沖を周遊しているとのことです。

ウミガメには、私たちの知らない能力がまだまだ隠されているのかもしれません。

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