都市のタヌキは人目につかないようこっそり食事する
都市化がもたらす野生動物への影響については、これまで鳥類や昆虫類を対象とした研究が行われてきました。
しかし哺乳類を対象とする研究は少なく、実際のところ、どんな影響があるのかはっきりと分かっていません。
そこで研究チームは、タヌキとニホンアナグマを対象とし、都市部と山間部における採食行動の違いを調査することに。
それぞれの森林で両者が落下果実をどのように食べるのか調査・比較しました。
その結果、都市部に生息するタヌキとニホンアナグマは、山間部の両種と比べて夜間に採食行動を行うことが多いと判明したのです。
さらに、1回あたりの採食時間は都市部の方が短いことも分かりました。
都市部のタヌキたちは、人間に見つからないように夜中にこっそりと、しかも短時間で食事を済ませていたのです。
そしてこの傾向は、「木の選び方」にも表れていました。
通常、野生動物は効率よく落下果実を食べるために、「実がたくさんなっている木」を選びます。
しかし都市部のタヌキとニホンアナグマは、「実が多い木」よりも「周囲から見通しの悪い木」を選ぶ傾向にありました。
やはり彼らは、効率よく食べることよりも、人間に発見されないことを優先していたのです。
タヌキとニホンアナグマは比較的さまざまな環境に適応しやすい野生動物として知られていますが、今回の結果から、人間が多い都市部にも適応できると考えられます。
『平成狸合戦ぽんぽこ』などのフィクション作品では、都市に適応していくタヌキたちが面白く描かれますが、あながち間違っていないのかもしれませんね。
今後、都市部に生息する野生動物の特徴をさらに詳しく解明できれば、それら野生動物の管理や保全に結び付くでしょう。