コオロギは空間認識能力をもっていた
研究チームは、ショッカクとは別の感覚器官「尾葉(コオロギの腹部にある)」に、気流刺激を与え、逃避行動を誘発しました。
そしてショッカクに当たる物体の形状や位置、また刺激の位置で進路が変化するか調査しました。
実験では、360度どの方向にも移動可能なトレッドミル(浮いた球を使っている)で、コオロギの動き方を追いました。
その結果、物体の形で進路が異なると判明。
コオロギの側面に設置した「棒状の物体」では進路に変化は生じませんでしたが、「壁状の物体」をコオロギの近くに置くと、壁の反対側に進路が偏ったのです。
また刺激を与える方向を変化させても、常に壁への衝突を避けるような進路を選択していました。
しかも気流刺激が与えられない場合の自発的な歩行では、ショッカクに壁が当たっていても、壁から離れようとしたり、近づこうとしたりする傾向は見られませんでした。
このことは、コオロギが触覚入力で反射的に行動しているわけではないことの証明となります。
さらに、この衝突を避ける進路選択は、正面に壁を置いたケースでも同様に見られました。
これらの結果を総合すると、コオロギはショッカクを使って空間を認識していると考えられます。
「物体を感知して反対方向に反射的に動く」のではなく、「障害物の位置をイメージして、それを避けるように移動できる」のです。
小さな昆虫でも空間をしっかりと把握できていたのですね。
今後研究チームは、コオロギの空間認識能力がどこまで優れているのか明らかにするため、研究を続ける予定です。