カンブリア爆発で誕生した生物がマントルまで沈んで戻ってきた
カンブリア爆発とは、カンブリア紀の地質学的に言えば比較的短い数千万年の期間で、現在存在する生物のグループ(門)がほとんど出そろった事象を指します。
これは地質学上の記録から見ると、という前置きがあるので、本当に突然生物が多様に進化したかどうかはまた別の話になりますが、少なくともカンブリア紀に生物の多様性が広がり、地球上に生命が溢れ出したのは確かなようです。
こうした地球上に生命が増えたことで、地上(海底を含む)には生命の死骸から成る堆積物が積み重なっていきました。
これは地球の長い歴史上から見ても、かなり劇的な変化でした。
こうした地球表面の変化は、プレートテクトニクスの活動で地球内部へも運ばれていき、地球内部の化学的な循環にも影響を与えたと考えられるのです。
そしてカンブリア紀の大量の生物たちの堆積物は、マントル下層のメソスフェアまで運ばれていたと考えられます。
これが研究者たちの発見した、若いキンバーライトに見られる炭素同位体組成の異変につながったのです。
つまり研究者たちは、プレートテクトニクスの沈み込み帯からマントル下層のメソスフェアまで取り込まれたあと、火山噴火で再び地上へと戻ってきたカンブリア紀の生物たちの痕跡を発見していたのです。
しかし、沈み込み帯に沿ってマントルに取り込まれる地表の堆積物というのは、ごくわずかであるはずです。
それが鉱物から検出可能なレベルで痕跡を残していたことは注目に値します。
これはつまり、地球マントルに沈み込んだ岩石は、均一に撹拌されたりはせず、特定のルートに沿ってまとまって移動し続けていることを意味しています。
地球の複雑な活動の一端が、ここからは見えてくるかもしれません。