驚くほど壮大な旅をしてきた炭素
地球内部には、どろどろに溶けたマントルが循環していて、それが地上へと運ばれ火山噴火を起こし、大気中へ火山ガスを放出したり、火成岩などを地上へもたらします。
ダイヤモンドのような宝石も、元はマントル下層で形成されたものが地上へ運ばれた鉱物の1つです。
こうした地球内部の活動が、地下深くの化学物質を地上に運び出していることはなんとなくイメージできますし、科学者たちもよく理解しています。
けれど逆に、地上にあるものが地下深くに運ばれ、地球内部に化学的な変化をもたらすことは、これまで確認されておらず、見過ごされてきました。
しかし、プレートテクトニクスの活動からもわかるように、地上の物質も地下深くへ運ばれています。
今回、そうした地上の堆積物の痕跡が、地下深くで形成される鉱物から初めて発見されたのです。
ETHチューリッヒの研究チームは、地球の歴史上、さまざまな時代で採取されたキンバーライト(kimberlite)という鉱物を調査しました。
キンバーライトは、カンラン石と雲母を主要構成鉱物とする火成岩の一種です。
この岩には、たまにダイヤモンドも混じっていたりします。
キンバーライトは、地球深部のマントル下部にある「メソスフェア」と呼ばれる場所で形成されます。
ダイヤモンドが混じることからわかるように、ダイヤモンドもこうした地下深くで形成されています。
研究チームは、このキンバーライトの約150のサンプルの炭素同位体組成を測定しました。
すると、年齢が2億5000万年未満の若いキンバーライトの組成が、古いキンバーライトとかなり組成が異なっていることを発見したのです。
それは一般的に、マントルで形成される鉱物に期待される炭素同位体組成とは、異なっていたのです。
一体、なぜ若い岩石には、古い岩石とまるで異なる炭素同位体の組成が見られたのでしょうか?
研究者たちは、これが地球に生物が大量に誕生したことによって起きた地球内部の変化を示している痕跡なのではないか、と考えたのです。
彼らが着目したのは約5億4000万年前に起きたカンブリア爆発でした。