人間の複雑な皮膚構造が触覚を生み出す
人間のような触覚をロボットに与えるのは、簡単なことではありません。
そもそも多くの人は、触覚を説明すること自体、難しいと感じるでしょう。
触覚は、物をつかんだりざらざらとした荒い表面をなぞったりするときに、脳で感じる独特の感覚です。
熱さや痛みといった痛覚とは異なり、「何かを触っている感覚」を生み出すものです。
では、この説明するのも難しい曖昧な感覚「触覚」は、どうすればロボットに与えることができるでしょうか?
答えは、人間の「触覚を生み出す構造」を複製し、そのままロボットに内蔵すればよいのです。
では、どの部分を模倣すれば、触覚を再現できるのでしょうか?
研究者たちが注目してきたのは、「真皮乳頭(しんぴにゅうとう)層」と呼ばれる部分です。
私たちの皮膚は、外側の「表皮」と内側の「真皮」から成り立っています。
そして真皮と表皮の境目は凹凸上に波打っており、この部分が「真皮乳頭層」と呼ばれています。
これまでの研究では、この真皮乳頭層には感覚神経が備わっており、この部分を通して触覚信号が脳に伝わると分かっています。
つまり皮膚の内側にある無数の突出が、「触っている感覚」を敏感に受け取り、複雑な信号として脳に送っていたのです。
そこで研究チームは、この「真皮乳頭層」を模倣することで、人間のような触覚を再現しようとしました。