どうして極圏より低い場所でオーロラが発生するのか?
確かにオーロラは極圏などの高緯度でよく見られますが、より低い場所で発生する「低緯度オーロラ」があります。
日本でも2015年に北海道で観測されており、実は『日本書紀』の中でも「赤気」という記述でオーロラ報告がなされているのです。
このように、オーロラ自体はかなり古くから知られていますが、その発生の仕組みが明らかになったのは20世紀に入ってからです。
オーロラは、太陽から飛んできた電子や陽子が原因で発生します。
太陽は毎秒100万トンの粒子を放出しており、これらは超高温のために電離してプラズマ化しています。
物質は高温になると分子がバラバラの気体になりますが、さらに高温になると電子と原子核がバラバラになり、この状態を「プラズマ」と呼びます。
このプラズマの飛来は「太陽風」と呼ばれ、地球まで届くと上層の大気にぶつかります。
地球の大気は、窒素分子、酸素分子、酸素原子などからなり、それぞれの分子・原子は、中心の「原子核」とその周囲をまわる「電子」で構成されています。
そして、太陽風のプラズマが地球大気にぶつかると、このうちの電子がエネルギーをもらい、外側の軌道に移ります。
これを「励起(れいき)状態」と呼びます。
ところが、励起した電子は不安定であるため、しばらくすると元の内側の軌道に戻ります。
このとき電子は、プラズマからもらったエネルギーを放り出し、それが光となって観測されることでオーロラが発生するのです。
「低緯度オーロラ」が発生するメカニズム
ご存知のように、地球はその周囲を磁力線で囲まれており、それらは北極と南極を結ぶように走っています。
しかしその形は均等ではなく、太陽風に押されることで、太陽と逆側の磁力線が長く伸びて、尾のような領域を作っているのです。
この領域は「プラズマシート」と呼ばれ、太陽風で飛んできたプラズマが大量にたまります。
プラズマは磁力線に沿って移動する性質があるため、磁力線の集まる極圏に向かって降りていき大気とぶつかります。
これが、オーロラが北極や南極を中心に発生する理由です。
ところが、まれに太陽表面が爆発(フレア)を起こして、普通の太陽風より強い「磁気嵐」が生じることがあります。
磁気嵐が起きると、プラズマシートのプラズマは、より地球に近いところまで入ってきます。
すると、磁力線に沿って移動するプラズマは、地球に近いものほど低緯度に降りていき、そこでオーロラを発生させるのです。
これが「低緯度オーロラ」の発生する仕組みです。
『竹書紀年』や『日本書紀」に記録されたオーロラは、強力な磁気嵐による低緯度オーロラを指しているのでしょう。
もし現代でこうした現象が起きた場合、地上の電子機器が大きな被害を受けることが予想されています。
そうなると、停電した真っ暗な都市の上空にオーロラが輝くことになるのかもしれません。