「牛マスク」でメタンを減らす試みが英国の環境賞を受賞
意外かもしれませんが、メタンは温室効果ガスが温暖化に与える全影響の23%を占めています。
メタンの排出量は二酸化炭素ほど多くはありませんが、温室効果は84倍もあるため、少量でも地球環境に大きな影響を与えます。
またさらに意外なことに「げっぷ」に代表される、草食動物の消化管から発せられるメタンは、全世界のメタン発生源の24%を占めています。
日本のデータにおいては、日本全土で排出されるメタンのうち27%あまりが草食動物の消化管から発生するもの(げっぷ)であるとするデータが報告されています。
牛などの草食動物の胃には植物の繊維を分解して栄養源に変えてくれる嫌気性細菌が生息しており、メタンはその変換過程で副産物として生成され「げっぷ」によって大気中に放出されます。
そこで英国のZelp社は、牛専用の「メタンを吸収して分解するマスク」を開発しました。
この牛マスクはベルトによって牛の頭部に装着できるようになっており、牛の鼻の穴のあたりからメタンを取り込むことが可能です。
牛が輩出するメタンの95%は口や鼻から出てくるために、頭部に取り込み口を設置することで効果的なメタン回収が可能になります。
また取り込まれたメタンは酸化剤によって二酸化炭素と水に分解されるようになっているとのこと。
もし仮に日本で飼育されている牛をはじめとした草食動物の全てにこのマスクを装着した場合、理論上、日本で排出される温室効果ガスが温暖化に与える影響を「16.2%」減らすことが可能になります。
牛にマスクを装着させるという奇抜にも思えるアイディアですが、真面目に取り組めば、かなり効果的が出るのかもしれません。
また牛マスクはメタン排出量を検知する機能のほかに牛の活動・体温・反芻・飼料の消費を追跡する機能を追加することが可能であり、牛の健康管理にも役立つとZelp社は述べています。
牛マスクの導入に政府の助成金が支払われるなどの支援が行われれば、温暖化対策として一定の効果を上げることができるでしょう。
ただ牛マスクに対して批判がないわけではありません。
そもそも温暖化は人間の活動が主原因であり、牛たちも人間の食料源として飼育されています。
そのため人間の「やらかし」を牛にマスクをすることで抑えようとする試みには、反発を覚える人々もいるようです。
(※牛マスクによって牛の採餌行動に影響を受けないことが示されており、Zelp社は牛マスクによって目立ったストレス行動は観察されないと述べています)
ただ現在、世界の食肉需要は急速な伸びをみせていることが報告されており、家畜が輩出するメタンを放置し続けることはできません。
牛マスクも含めて、何らかの対策を取らない場合、地球温暖化は加速していくでしょう。