「604種類のタスクをこなせるAI」は汎用人工知能に近いのか?
DeepMind社が開発したAI「Gato」は、単一のニューラルネットワーク(人間の脳の神経細胞のように働くシステム)によって動作しますが、1つのタスクを行うだけではありません。
合計604種類の異なったタスクを実行可能なのです。
実際にアメリカのビデオゲーム「Atari」をプレイしたり、画像に説明文を付け加えたりできます。
また人間とチャットしたり、ロボットアームを操作してブロックを積み上げたりすることも可能。
膨大の作業をたった1つのAIがこなせるようになったのです。
では、AI「Gato」は汎用人工知能と呼べるでしょうか?
科学者たちは、「まだまだそのレベルには到達していない」と判断しています。
なぜならGatoには、人間のように必要に応じて学習していく機能が備わっていないからです。
つまりGatoは、事前にトレーニングしたモデルを1つに集約させただけであり、本当の汎用性を身に付けていない、というのです。
またGatoが実行できるタスクも、それぞれの性能はそこまで高いレベルではないようです。
とはいえ、イギリスのヘリオット・ワット大学に所属するコンピュータ科学者オリバー・レモン氏は、このAIにも可能性を見いだしています。
「このようなAIを発展させることで、より適応性の高いモデルをつくるための基盤を生み出せるかもしれない」というのです。
確かにGatoのレベルでは、汎用性人工知能になりえません。
しかし、実行できるタスクがさらに増えていくなら、実用可能なレベルに到達するかもしれません。
ゲーム攻略しながら、滑らかに人間とチャットできるAIがいれば、それだけでもオンラインのゲームプレイヤーには人間がそこにいるように感じられるでしょう。
一般的に多数のタスクを高いレベルでこなせるようになったAIは、まるで人間のように機能します。
さらに、それら膨大なタスクを集約させる過程で、汎用性の基礎を発見できるかもしれません。
現在、人工知能はゆっくりと人間の知能に近づいてきており、その都度、新しい可能性を示しています。