複雑な構造をもつナノカーボンを作るには?
グラフェンやカーボンナノチューブなど、ナノメートルサイズの周期性を持つ炭素物質を「ナノカーボン」と呼び、軽量かつ高機能な次世代の材料として大いに期待されています。
ナノカーボンは、その形によって電子的・機械的性質に大きな違いが出るため、望みの性質を持つナノカーボン構造を作るには、原子レベルで精密に合成できなければなりません。
その中で近年、ナノカーボン内の部分構造にあたる分子を合成する「分子ナノカーボン科学」が注目されています。
この分野ではこれまでに、フラーレンやカーボンナノチューブの部分構造(分子ナノカーボン)が多く合成されてきました。
![代表的なナノカーボン構造と、対応する分子ナノカーボン](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2022/05/20220520101007.png)
しかし、これらの分子ナノカーボンは、あまり複雑でない比較的単純な構造です。
その一方で、もっと複雑な構造を持つナノカーボンは理論的に多数予測されており、また、こうしたナノカーボンがどんな性質を秘めているのか、非常に興味が持たれています。
そんなナノカーボン開発の第一歩として、研究チームは、結び目や絡み目といった複雑な構造を持つ分子ナノカーボンの合成を開始。
中でも、「メビウスの輪」の形状を持つ分子ナノカーボンの合成を目指しました。