「他人の目」を気にして、健康的なメニューを選ぶように
今回の研究は、アメリカの大都市に在住する社会人および大学生を対象にしたものです。
ある実験では、180名の大学生を被験者に、食事会と称して、M&Ms(米国のチョコレートブランド)のキャンディーか、ヘルシーなレーズンのいずれかを提供。
そこに同じ大学内の学生か、他大学の学生のいずれかを同席させ、どちらの食品を選ぶかを検証しました。
その結果、同じ大学の生徒の場合、88%がM&Msのキャンディーを選んだのに対し、他大学の学生がいた場合、M&Msのキャンディーを選ぶ学生は69%まで減ったのです。
また、200名の成人男女を対象とした同様の実験では、見知らぬ他人を同席させ、それらの人々が「周囲に寛容的である」か、あるいは「周囲に批判的である」のいずれかを、前もって被験者に告げました。
選べるメニューには、クッキーなどの甘いお菓子とヘルシーなサラダを用意します。
すると、同席した相手が寛容的であると告げられた場合、被験者はお菓子を選ぶ傾向にあったですが、批判的であると告げられた場合は、サラダを選ぶ被験者が多くなったのです。
このことから人は、見知らぬ相手(他の大学や会社に属する人)が同席する場合、より健康的な食事を選ぶ可能性が高くなると推測できます。
この結果について、研究主任のジャニナ・スタインメッツ(Janina Steinmetz)氏は「私たちは、食事が社会生活において重要な役割を果たすことを理解しており、しばしば食事メニューの選択から他人の性格的な特徴を推論している」と指摘します。
これは裏を返せば、私たちは、より健康的なメニューを選択することで、同席する相手に否定的な印象を与えないようにしているということです。
確かに、他大学の学生との交流や、商談の席での食事会では、なるべくヘルシーで慎ましいメニューを選んだ方が、相手に好印象を持たれやすい気がしますね。
研究チームは、この心理的作用が、日頃の健康的な食生活を促進する方法の一つとして活用できる可能性がある、と話します。
たとえば、自宅で食事をすると、人目を気にしなくていいので、どうしても好きなものばかり食べがちです。
とくに現在は、コロナ禍の影響で孤食の機会が多く、1〜2年前より太ってしまったという人も多いはず。
しかし、見知らぬ人のいる場所で食事を摂るようにすれば、自然と健康的なメニューを選ぶようになると考えられます。
また、そうした場では、ゆっくり行儀よく食べることも意識するでしょう。
こうした”他人の目”をうまく利用する食事法が、ダイエットや生活習慣の改善につながるかもしれません。