周囲の状況や経験によって知覚内容は異なる
そして無意識のうちに、知覚内容を変化させているようです。
例えば、全く同じ色を見たとしても、その見え方は状況とタイミングにいくらか左右されます。
実際に色の対比効果の1つである「明度対比」を見てみましょう。
両方とも中心のグレーの色は全く同じです。
しかし、周囲を明るい色で囲むと、中心のグレーは本来の色よりも暗く感じます。
逆に周囲を暗い色で囲むと、中心のグレーは本来の色よりも明るく感じるのです。
同じ色なのに、状況によって脳が異なった捉え方(知覚)をしているのが分かりますね。
同様の現象は、私たちの持つ記憶によっても発生します。
例えば、「ネッカーキューブ(ワイヤーフレームで表現された立方体)」を見た場合を考えてみましょう。
下のような立方体のフレームを見たとき、みなさんはこの立方体をどの様な状態と捉えるでしょうか?
おそらくほとんどの人は、この立方体を下の画像の左側のような状態と認識すると思います。
これは実際、すでに過去の調査から確認されている事実で、ほとんどの人はネッカーキューブを見たとき上の面が手前に来ているように感じるのです。
なぜ、そのように感じるのかというと、ほとんどの人は立方体をこの角度で眺めた記憶しか無いためです。
ダンボール箱や、ティッシュ箱など、日常で見かける立方体(あるいは直方体)を思い返してみると、おそらくどれも(b左)のような状態で眺めているはずです。
つまり私たちの持つ記憶が、フレームだけの立方体の見え方に影響していると考えられるのです。
では、こうした2通りの見え方をする立体の知覚に関して、他にも影響を与える要素はあるでしょうか?
一つの予想として、私たちの知覚は姿勢にも影響を受ける可能性が考えられます。
立体を上から見た場合、私たちは見下ろす姿勢(首を下に向ける)を取っており、立体を下から見た場合、私たちは見上げる姿勢(首を上に向ける)を取っているはずです。
そこで、今回の研究チームは私たちの「姿勢」が知覚にどのように影響するのか実験で確かめることにしたのです。