多様な虫の鳴き声が人間をよりリラックスさせる
私たちをリラックスさせてくれる「自然の音」には、さまざまな種類があります。
例えば、「植物が風で揺れる音」「雨の音」「川が流れる音」などは、世界中で好まれていますね。
スズムシやコオロギの鳴き声を聞くとリラックスする、という人も多いのではないでしょうか。
しかし、虫の鳴き声のリラックス効果を科学的に研究したケースはあまり多くありません。
そこで今回の研究チームは、どのような虫の鳴き声がリラックス効果をもたらすか調査することにしました。
研究では、千葉県白石市の草むらで見つかった4種類の虫(エンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシ)が用いられました。
そして、これら4種の鳴き声を組み合わせ、合計15通りの音源サンプルを作成。
実験室で大学生65名にランダムで7通りずつ聞かせ、各音源に対する印象を回答してもらいました。
参加者たちは、「暗い-明るい」「醜い-美しい」「そわそわする-落ち着く」などの形容詞対の質問と、「嫌い-好き」「欲しくない-欲しい」などの好みに関する質問に答えています。
その結果、聞かせる虫の鳴き声が1種類のみであれば、好みに有意な差はありませんでした。
ところが複数の虫の鳴き声を組み合わせると、数が増えるにしたがって、好みの得点が向上すると判明。
そして因子分析(結果の背後にある要因を明らかにするもの)を行ったところ、4つの因子「穏やかさ」「華やかさ(派手さ)」「音楽性」「深み」が抽出されました。
各因子に対する得点は、虫の種類が増えるにしたがって向上しており、特に「華やかさ」「音楽性」の2つが顕著でした。
さらに実験に用いた4種の鳴き声の音響スペクトルを分析したところ、それぞれで周波数の特徴、音の高さ、強さ、長さが異なっていると判明。
研究チームは、この点に関して、「複数の鳴き声が組み合わさることで、聴感上の調和が得られるとともに、リズムが多様化し、より好ましい印象を与えた」と述べています。
これらの結果から、虫の鳴き声にも自然の音と同様のリラックス効果があると考えられます。
特に、多様な虫たちが奏でる演奏会は、私たちの疲れた気持ちを回復させてくれるようです。
とはいえ今回の実験は大学生だけを対象としたものでした。
今後は文化や年齢の違いが及ぼす影響を明らかにすることが課題となるでしょう。