ヒトデの死体漁りは「食物連鎖のサイクル」に必須
写真中の死骸は、その形態や背景を泳ぐ仲間の種類から「カリフォルニアアシカ(Zalophus californianus)」と見られます。
このアシカがどのように死亡したかはわかりません。
自然死の可能性もありますし、船体との衝突やプラスチックゴミの誤飲、漁具への絡みつきなど、人為的な要因も考えられます。
ただ、カリフォルニアアシカの個体数は近年増加の一途をたどっており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでも「軽度懸念種」に指定されています。
そのため、絶滅の恐れは今のところありません。
一方、アシカの死骸に群がるヒトデはすべて「コウモリヒトデ(Patiria miniata)」という種です。
本種は、腕と腕の間をつなぐ部分がコウモリの翼のように見えることから、この名前が付けられました。
米モントレーベイ水族館(Monterey Bay Aquarium)によると、腕の数は通常5本ですが、多いものでは9本になり、大きさは最大で20センチに達するという。
特徴的なのは、種内で多様な体色を持っている点で、赤やオレンジ、黄色、茶色、緑、紫など、個体によって色が大きく異なります。
腕の先端に光を感知するセンサーが、腕の下側には嗅覚細胞が備わっており、水中に入ってくる太陽光や、海中を漂う化学物質の匂いを頼りに死骸を探します。
そして、死骸を見つけると、2つある胃のうち1つを口から押し出し、消化酵素を分泌して肉片を分解しながら摂取します。
コウモリヒトデのような”スカベンジャー(死骸漁り)”は、生態系の維持にとって欠かせない存在です。
彼らが去った後には、細かく分解された肉片が残り、そこにまた小さな魚やカニたちが群がり集まって、自分たちのエネルギーとします。
スカベンジャーは、食物連鎖の上位に位置する生物の死骸を分解して、下位にいる生物たちが食べやすくしているのです。
彼らのおかげで、食物連鎖のサイクルはスムーズに回っていきます。
しかし、コウモリヒトデは近年、気候変動のために脅威にさらされている可能性があるという。
特に海水温の上昇が、2013年にカナダ北西部のアラスカ沖で初めて発生した、ヒトデ特有の病気のまん延を助長しているのです。
この病気は細菌の繁殖が原因であり、これにかかると、ヒトデの腕がねじれ、白い病変が生じ、体が欠損して、ついには死に至ります。
モントレーベイ水族館によると、ヒトデコウモリもこの病気にかかる危険性があるため、注意深い監視が必要です。
最後に、今回の写真を撮影したデイビッド・スレーター氏は、こう話しています。
「最初にこの写真を公開したときから、何か特別なものであることはわかっていました。
しかし、このような権威あるコンテストで受賞できた喜びは、とても言葉では言い表せません。
この一枚は、美と冒険が思いがけない場所で見つかることを私に教えてくれました」