人工光合成は宇宙ステーションや地下都市での耕作を可能にする
今回の研究により、人工光合成によって生産された酢酸には、食用に用いられるさまざまな植物・菌類のエネルギー源や体を作る炭素源になることが示されました。
特に藻類クラミドモナス(コナミジンコ)の場合、通常の光合成が一切行われない完全な暗闇の状況でも、人工光合成によって得られた酢酸だけで成長が行われることが判明します。
また追加の調査で、藻類の場合、人工光合成で得られた酢酸を使う場合(太陽光発電➔電気分解➔酢酸➔藻類の成長)、純粋な光合成のみで育てた場合(太陽光➔光合成➔藻類の成長)と比較して、4倍もエネルギー効率が高いことが示されました。
また酵母の場合、人工光合成で得られた酢酸を使う場合(太陽光発電➔電気分解➔酢酸➔酵母の成長)、トウモロコシから抽出された光合成に由来するブドウ糖を使う場合(光合成➔ブドウ糖➔酵母の成長)に比べて、エネルギー効率は18倍も高くなることが示されました。
加えてイネやトマトなどの馴染み深い食用植物に対しても、人工光合成と光合成を一緒に行うことで、収穫量の促進ができる可能性が示されます。
これらの結果は、人工光合成を利用することで、より少ない耕作面積からより多い植物栽培が可能になる可能性を示します。
光合成に依存しない植物栽培が行えるようになれば、宇宙ステーションや地下環境など、空間や光が限られた場所でも耕作地として使えるようになるでしょう。
研究者たちは、人工光合成を使用して食料を生産することは、農業の革新につながると述べています。