ドミノ倒しをスピードアップさせるのは「摩擦」と「間隔」
膨大なシミュレーションの結果、いくつかの要素がドミノ倒しをスピードアップさせると分かりました。
1つ目の要素は、ドミノ同士の摩擦です。
ドミノ倒しは、後ろのドミノが倒れて前のドミノにぶつかることで成立します。
このときに伝わるエネルギーは、ドミノ同士の摩擦によっていくらか失われてしまいます。
そのため表面が滑らかなドミノを使いドミノ同士の摩擦をなるべく減せば、ドミノ倒しのスピードがアップさせられると分かったのです。
2つ目の要素は、ドミノと床の摩擦です。
サンドリン氏の動画にあるように、ドミノと床の摩擦が小さいと、ドミノは倒れるときに後方に滑ってしまいます。
これにより、後ろのドミノが前のドミノの低い位置にぶつかるようになり、伝えるエネルギーが小さくなっていました。
このためざらざらの床にドミノを並べ、ドミノと床の摩擦を大きくすれば、ドミノが滑らずに安定して倒れるようになります。
これによりぶつかる位置も高くなり、より強いエネルギーが伝達されることで、ドミノ倒しをスピードアップさせられるのです。
3つ目の要素はドミノ同士の間隔です。
シミュレーションでは、1つ目と2つ目の要素を含めつつ、ドミノ同士の間隔を狭くするなら、ドミノ倒しを最速にできると分かりました。
ドミノの間隔がドミノの厚さの半分のとき、「摩擦」がうまく作用し、スピードアップにつながるというのです。
今回の研究では、ドミノ同士の摩擦を小さくし、ドミノと床の摩擦は大きく、またドミノ同士の間隔を狭く並べるなら、ドミノ倒しがよりスピードアップすると分かりました。
ちなみに研究チームは、真逆のパターンも実験しています。
ドミノ同士の摩擦を大きくし、ドミノと床の摩擦は小さく、またドミノ同士の間隔を広く(間隔がドミノの厚さの3倍より広い)並べたのです。
その結果は、悲惨なものでした。
ドミノの倒れ方が不安定になり、自然に連鎖が止まってしまうこともあったのだとか。
ドミノが倒れるときに後方に大きく滑ってしまい、しかも前のドミノとの距離も遠いので、当てることができずにそこで連鎖が終わってしまいました。
今回の実験では、ドミノ倒しの速度に焦点を当て、関係するいくつかの要因を明らかできました。
とはいえ、他の科学者たちが指摘するように、「ドミノ倒しの物理的なメカニズムを明らかにするには、まだまだ多くの研究が必要」です。
シンプルで奥深いドミノ倒し。科学者たちの挑戦は今後もしばらく続きそうです。