微生物の力でアルコールを水と二酸化炭素に分解!
二日酔いでせっかくの休日を台無しにした人は多いでしょう。なぜ二日酔いは起きるのでしょうか?
お酒を飲んで体内に吸収されたアルコール(エタノール)は、血中に取り込まれ体内を巡ります。これが脳に入り込むと酔いが起こります。
そしてこの血中のアルコールを分解してくれるのが肝臓です。
肝臓はアルコールをアセトアルデヒドに分解し、さらにそれをアセテート(酢酸)に分解します。
アセテート(酢酸)まで分解されてしまえば、あとはこれが血流にのって全身を巡り、筋肉や脂肪組織で水と二酸化炭素に分解されて、呼吸や汗、尿として体外へ排出されます。
しかしこのプロセスで問題となるのが最初にアルコールを分解して生成される物質アセトアルデヒドです。
これは人体にとっては有害な物質で、吐き気や動悸、頭痛などを引き起こします。
アルコールを接種しすぎると、肝臓のアセトアルデヒド分解能力を超えてしまい、多量のアセトアルデヒドが体内に残ったままの状態になってしまいます。
これがいわゆる二日酔いの状態です。
通常日本で市販されている、二日酔い予防薬は肝臓の機能を高めることで二日酔いを軽減しようとしています。
しかし、今回話題となっている薬Myrklは、こうした通常の二日酔い予防薬とは原理が異なります。
Myrklは、プロバイオティクス・サプリメントの一種です。
プロバイオティクス(Probiotics)とは、人の体内にふつうに存在する微生物と同じか、類似する微生物のことを指し、適正量を摂取すると、健康に有益な効果をもたらすことで知られます。
1989年に、イギリスの微生物学者によって定義され、アンチバイオティクス(抗生物質)に対する言葉として誕生しました。
プロバイオティクスは、すでに多くの健康食品に使用されており、ヨーグルトや飲み物、錠剤として市販されています。
Myrklに使用されているのは、発酵させた米ぬかから生成された2種類の腸内細菌ー枯草菌(Bacillus subtilis)とバチルス・コアグランス (Bacillus coagulans)ーです。
私たちがアルコール(エタノール)を摂取すると通常、20%が胃で、80%が腸で吸収されます。
Myrklはこの腸におけるアルコール吸収をブロックするのです。
Myrklを飲酒前に服用すると、そこに含まれる2種の微生物が、体に吸収される前にアルコールを小腸内で水と二酸化炭素にすばやく分解してくれるのです。
また、錠剤には耐酸性カプセルを使用しているため、胃の自然酸から微生物を保護し、腸まで生きたまま彼らを到達させます。
実験では、24名の健康な白人男女(男性13名、女性11名、平均年齢25歳)を対象に、Myrklの効き目をテスト。
被験者には、2錠のMyrklか、プラシーボの錠剤をランダムに配り、7日間にわたって毎日服用してもらいました。
(市販されているMyrklでは、アルコールを飲む1~12時間前に2錠を飲むことが推奨されている)
その後、体重に応じた少量のアルコール(アルコール度数40%のスピリッツ[蒸留酒]50~90ml)を与え、2時間後までの血中アルコール濃度を測定します。
その結果、飲酒後の60分間で、Myrklを服用した被験者の血中アルコール濃度は、プラシーボ錠剤に比べて、最大70%も低くなったことが判明したのです。
これは、50mlのスピリッツ(アルコール度数40%)を飲んだとしても、15mlのスピリッツを飲んだ場合と同じ程度しか血中にアルコールが入らない状態といえます。
つまり、Myrklはそもそも飲んだアルコールを体に吸収させないので、飲んでも酔うことがあまりできなくなります。
そのため、この薬を使用するなら、そもそもお酒を飲む意味がないのではないか? という声もあります。
そんな人がいるかどうかわかりませんが、アルコールの害は受けずに、お酒の味だけ楽しみたいという人にはいいかもしれません。
けれど、そうなるとお酒を飲む意味とはなんなのでしょうか?
また、体自体がアルコールを吸収しないので、仕事の付き合いでどうしても飲みたくないお酒を飲まなければならないという人にとっては、重宝するかもしれません。
しかし、いずれにせよそれ以前の問題として、Myrklには、そもそも主張通りの効果があるかどうかを疑問視する声も存在しています。
その理由として、まだ実験のサンプル数が被験者24名と少なく、また若くて健康な白人男女しか調査していない点が挙げられます。
それゆえ、中年層や、胃腸および肝臓に病気を抱えている人、あるいは白人以外の人でも、同じ様に作用するかわかりません。
さらに、体重、性別、身体活動、食事量などによって、アルコールの吸収レベルにも個人差があるため、現在の服用量が適切なのかも不明です。
現時点でMyrklは、一部の人には確かに効き目があるようですが、これらの疑問点を踏まえると、薬の効果を当てにして無計画のお酒を飲むのよりは、飲酒量を控える方が賢明でしょう。