男性は日光に当たるだけで、食欲ホルモンが分泌される?
今回の研究は、1999年から2001年にかけて、イスラエル在住の参加者約3000人を対象に、食事内容を記録した調査を分析したものです。
それによると、男性の参加者は、3月〜9月の間、とくに日射量の多い夏場になると、1日あたりの平均摂取カロリーが増加していることがわかりました。
他の季節に比べて約17%増という結果が出ましたが、女性の食事量は、季節に関係なく、ほぼ変化がありませんでした。
研究チームは、この結果を裏付けるべく、マウスを用いた生体実験を実施。
10週間にわたり毎日、マウスに紫外線を浴びせ続けたところ、オス個体では「食物摂取量の有意な増加」が確認されました。
さらに、オスの皮膚組織にある脂肪細胞を調べてみると、食欲ホルモンとして知られる「グレリン(ghrelin)」の分泌が促進されていることがわかったのです。
脳の視床下部に到達したグレリンが、オス個体の食欲を増進し、食物摂取量を増やしたものと考えられます。
一方で、こうした一連の作用は、メスのマウスには見られませんでした。
メス個体では、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが、皮膚内の脂肪細胞におけるグレリンの分泌を妨げていたのです。
その証拠に、エストロゲンを抑制させたメスに紫外線を浴びせると、食物摂取量が増加傾向を示しました。
さらにチームは、このプロセスが人体でも起きていることを実証すべく、3つの追加実験を実施。
最初の2つは、ラボ内でヒト細胞を培養し、紫外線を照射して、反応を調べたものです。
その結果、紫外線を5日間照射したヒト細胞の”男性皮膚サンプル”で、グレリンの増加を確認することができました。
3つ目は、光線(紫外線)療法を受けている皮膚疾患患者の食事記録を調査したものです。
すると、男性患者では、治療開始から約1カ月で空腹感が増大し、食事摂取量が増えていたことがわかりました。
反対に、女性患者ではそのような変化が見られていません。
以上の結果から、男性は浴びる日射量が増えると、食欲ホルモンの分泌が促進され、食事摂取量が増加する可能性が高い、と結論されました。
一方で、単純に日光に当たること以外にも、食欲を増進させている要因はあると指摘されています。
英アストン医科大学(AMS)の管理栄養士であるデュアン・メラー(Duane Mellor)氏は「くわえて、暑い季節に日光への露出が増えると、人々は身体的により活発になります。そのため夏場は日光による食欲増進の効果がさらに増長される可能性があるでしょう」と語ります。
つまり、夏場に薄着で運動したり、海やプールで泳いだりして身体を動かすと、お腹も自然と空くため、よりこの効果が強化されると考えられるのです。
男性は夏場に必要以上の食欲が湧き、太りやすくなる可能性があるようなので、食べ過ぎには注意しましょう。