不死身のベニクラゲの遺伝的秘密を特定!
不死身のベニクラゲの遺伝的秘密を特定! / Credit: Maria Pascual-Torner – Genetic study of immortal jellyfish may help explain its longevity(phys, 2022)
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不死身クラゲの「若返り」を可能にする遺伝子の秘密を発見!

2022.09.03 17:00:52 Saturday

死ぬことを運命づけられた生命の中で、”不老不死”をすでに手に入れてしまっている生物がいます。

ベニクラゲです。

体長1センチにも満たないベニクラゲは、危機を察知するたびに若返りを繰り返し、何度も人生をリスタートすることができます。

その秘密はどこにあるのか?

スペイン・オビエド大学(Universidad de Oviedo)の研究チームは今回、不死身のベニクラゲと、寿命の限られた近縁種のクラゲを比較して、遺伝的な違いがどこにあるかを調査。

その結果、不死身のベニクラゲの遺伝子にうちに、”若返り”を可能にすると見られるいくつかの特徴が発見されました。

研究の詳細は、2022年8月29日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。

Genetic study of immortal jellyfish may help explain its longevity https://phys.org/news/2022-08-genetic-immortal-jellyfish-longevity.html Researchers zoom in on why the “immortal jellyfish” just keeps on living forever https://www.zmescience.com/science/scientists-mapped-genetic-code-of-immortal-jellyfish-that-can-age-in-reverse-30082022/
Comparative genomics of mortal and immortal cnidarians unveils novel keys behind rejuvenation https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2118763119

不死身のベニクラゲ、驚異のライフサイクルとは?

クラゲの一生とは?
クラゲの一生とは? / Credit: canva

クラゲは、海の中をふわふわと漂う傘のような姿が印象的ですが、最初からあの形ではありません。

誕生〜死に至るまで、クラゲは何段階もの発生ステップを踏むのです。

まず最初に、オスとメスの交配によって受精卵がつくられ、そこから「プラヌラ」と呼ばれる幼生が生まれます。

プラヌラは、海の中を漂ったのち、岩場や貝殻などに付着して、「ポリプ」という固着状態に入ります。

ポリプは、水中に無数の触手を漂わせて、流れてきたプランクトンを捕食しながら成長します。

そうする内に、ポリプは胴体がだんだんとくびれ始め、ソフトクリームのように、いくつもの層を重ねたような状態へと発生します。

これが「ストロビラ」です。

ストロビラの重なった層は次第に、バラバラに分裂していき、その一つ一つが命を持ったクラゲのベビーとなります。

これを「エフィラ」と呼びます。

あとは、このエフィラが徐々に成長し、私たちのよく知る形の「稚クラゲ」となり、最終的に「メデューサ」と呼ばれる大人の状態へとたどり着くのです。

そして、ほとんどのクラゲは寿命が尽きると、体が分解されて、海中へ溶け込んでいき、一生を終えます。

ベニクラゲの「メデューサ(成体)」
ベニクラゲの「メデューサ(成体)」 / Credit: Maria Pascual-Torner – Genetic study of immortal jellyfish may help explain its longevity(phys, 2022)

ところが、ベニクラゲだけは違います。

大人になるまでは同じ発生プロセスを経るのですが、メデューサの段階で命の危機を感じると、ポリプの状態に戻り、そこから再び生を始めるのです。

しかも、この若返りはたった1回だけ許された能力ではなく、何度も発動することができます。

つまり、ベニクラゲは理論上、寿命に終わりのない不死身の存在なのです。

その上、ベニクラゲのポリプからは、複数の個体がクローン生産されるので、若返るたびに数が増えていきます。

不死身のベニクラゲの「ポリプ」
不死身のベニクラゲの「ポリプ」 / Credit: Maria Pascual-Torner – Genetic study of immortal jellyfish may help explain its longevity(phys, 2022)

ただし、海の汚染状態や生息環境の温度によっては、若返りが発動できないこともあるそう。

また、基本的にベニクラゲは、ほかの海中生物の餌として食べられまくっているので、不死身といえど、数が増えすぎることはないようです。

それでもベニクラゲは、人類が追い求める”不老不死”の謎を解く上で、最良の存在となります。

そこで、オビエド大学の研究チームは、ベニクラゲの”若返り”を可能にしている遺伝子の秘密を探ることにしました。

「若返り」に寄与する遺伝的特徴を発見!

研究チームは今回、不死身のベニクラゲの一種(Turritopsis dohrnii)と、近縁種ではあるが不死身ではないクラゲ(Turritopsis rubra)を対象に、遺伝子サンプルを採取し、全ゲノム配列の解読を行いました。

それにより、若返りができる遺伝子とできない遺伝子との差を探りました。

その結果、不死身のT. dohrniiは、近縁のT. rubraに比べて、細胞の修復や保護にかかわる遺伝子の数が2倍も多いことが判明したのです。

さらに、細胞分裂を制限し、テロメア(染色体を覆う保護膜)が破壊されるのを防ぐための遺伝子変異も保有していました。

細胞分裂とテロメアの劣化および損傷は、老化と密接に関係しているため、細胞分裂を遅らせたり、テロメアを守るのは、長寿を実現する上で理にかなっています。

この結果は、ベニクラゲの不老不死のメカニズムを完全に解き明かすものではありませんが、これらの遺伝的特徴が、若返りの実現に寄与していることは間違いないでしょう。

寿命に限りがあるT.ruba(左)と不死身のT.dohrnil(右)の分布地とライフサイクル
寿命に限りがあるT.ruba(左)と不死身のT.dohrnil(右)の分布地とライフサイクル / Credit: Maria Pascual-Torner et al., PNAS(2022)

ただし、今回の発見をすぐさま人間に応用することはできません。

研究主任の一人である海洋生物学者のマリア・パスクアル・トーナー(Maria Pascual Torner)氏は「私たちの発見は、老化の過程をよりよく理解するのに役立ちますが、ベニクラゲと同じアンチエイジング機構を人間に適用することは不可能です」と話します。

また、本研究には参加していないフロリダ海洋学研究所(FIO)のモンティ・グラハム(Monty Graham)所長も「この研究が直ちに商業的価値を持つわけではない」ことに同意しています。

グラハム氏は「たとえば、ベニクラゲを採取して、老化を止めるスキンクリームを作ろうという見方はできないでしょう」と述べました。

しかし、ベニクラゲの遺伝子の謎を紐解いていけば、人間の長寿に役立つ何らかのヒントが得られるかもしれません。

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