不死身のベニクラゲ、驚異のライフサイクルとは?
クラゲは、海の中をふわふわと漂う傘のような姿が印象的ですが、最初からあの形ではありません。
誕生〜死に至るまで、クラゲは何段階もの発生ステップを踏むのです。
まず最初に、オスとメスの交配によって受精卵がつくられ、そこから「プラヌラ」と呼ばれる幼生が生まれます。
プラヌラは、海の中を漂ったのち、岩場や貝殻などに付着して、「ポリプ」という固着状態に入ります。
ポリプは、水中に無数の触手を漂わせて、流れてきたプランクトンを捕食しながら成長します。
そうする内に、ポリプは胴体がだんだんとくびれ始め、ソフトクリームのように、いくつもの層を重ねたような状態へと発生します。
これが「ストロビラ」です。
ストロビラの重なった層は次第に、バラバラに分裂していき、その一つ一つが命を持ったクラゲのベビーとなります。
これを「エフィラ」と呼びます。
あとは、このエフィラが徐々に成長し、私たちのよく知る形の「稚クラゲ」となり、最終的に「メデューサ」と呼ばれる大人の状態へとたどり着くのです。
そして、ほとんどのクラゲは寿命が尽きると、体が分解されて、海中へ溶け込んでいき、一生を終えます。
ところが、ベニクラゲだけは違います。
大人になるまでは同じ発生プロセスを経るのですが、メデューサの段階で命の危機を感じると、ポリプの状態に戻り、そこから再び生を始めるのです。
しかも、この若返りはたった1回だけ許された能力ではなく、何度も発動することができます。
つまり、ベニクラゲは理論上、寿命に終わりのない不死身の存在なのです。
その上、ベニクラゲのポリプからは、複数の個体がクローン生産されるので、若返るたびに数が増えていきます。
ただし、海の汚染状態や生息環境の温度によっては、若返りが発動できないこともあるそう。
また、基本的にベニクラゲは、ほかの海中生物の餌として食べられまくっているので、不死身といえど、数が増えすぎることはないようです。
それでもベニクラゲは、人類が追い求める”不老不死”の謎を解く上で、最良の存在となります。
そこで、オビエド大学の研究チームは、ベニクラゲの”若返り”を可能にしている遺伝子の秘密を探ることにしました。