「若返り」に寄与する遺伝的特徴を発見!
研究チームは今回、不死身のベニクラゲの一種(Turritopsis dohrnii)と、近縁種ではあるが不死身ではないクラゲ(Turritopsis rubra)を対象に、遺伝子サンプルを採取し、全ゲノム配列の解読を行いました。
それにより、若返りができる遺伝子とできない遺伝子との差を探りました。
その結果、不死身のT. dohrniiは、近縁のT. rubraに比べて、細胞の修復や保護にかかわる遺伝子の数が2倍も多いことが判明したのです。
さらに、細胞分裂を制限し、テロメア(染色体を覆う保護膜)が破壊されるのを防ぐための遺伝子変異も保有していました。
細胞分裂とテロメアの劣化および損傷は、老化と密接に関係しているため、細胞分裂を遅らせたり、テロメアを守るのは、長寿を実現する上で理にかなっています。
この結果は、ベニクラゲの不老不死のメカニズムを完全に解き明かすものではありませんが、これらの遺伝的特徴が、若返りの実現に寄与していることは間違いないでしょう。
ただし、今回の発見をすぐさま人間に応用することはできません。
研究主任の一人である海洋生物学者のマリア・パスクアル・トーナー(Maria Pascual Torner)氏は「私たちの発見は、老化の過程をよりよく理解するのに役立ちますが、ベニクラゲと同じアンチエイジング機構を人間に適用することは不可能です」と話します。
また、本研究には参加していないフロリダ海洋学研究所(FIO)のモンティ・グラハム(Monty Graham)所長も「この研究が直ちに商業的価値を持つわけではない」ことに同意しています。
グラハム氏は「たとえば、ベニクラゲを採取して、老化を止めるスキンクリームを作ろうという見方はできないでしょう」と述べました。
しかし、ベニクラゲの遺伝子の謎を紐解いていけば、人間の長寿に役立つ何らかのヒントが得られるかもしれません。