古代魚の化石から「歯の起源」がウロコである証拠を発見!
脊椎動物の進化において歯の獲得は最も重要なステップとなっています。
歯は獲物に噛り付くのを容易にし、自分より大きな体を持つ相手でも食べることを可能にしてくれます。
そんな大切な歯ですが、元々は魚たちの体の表面を覆うウロコが起源だったとする説(アウトサイド‐イン仮説)が有力視されています。(※論文では皮歯のことを「歯のようなウロコ」と表現されています)
たとえばサメやエイの体の表面はエナメル質によって構成された、無数の小さな歯「皮歯(ひし)」によって覆われていることが知られています。
これらの小さな歯が唇を覆うように配列し歯として機能するように巨大化した可能性は、十分に考えられます。
また実際に、原始的なサメや顎を持つ初期の魚の化石からは、口の周りに発達した皮歯を持つものが発見されています。
これら口周りの皮歯も獲物に噛り付いたり引っかけて逃げにくくするために有利だったと考えられます。
そして時が経過するにつれてより優れた口周りの皮歯を持つものが選別され、最終的に歯と呼べる存在に変化していったと考えるのも妥当と言えるでしょう。
さらに2011年に発表された研究では、皮歯から歯へ移行する中間段階と考えられる化石が発見されたことも報告されています。
この魚の化石では、上の図のように、体の表面を覆う皮歯が口の周辺に近づくにつれて口の奥に向けて傾斜して、唇のまわりで歯を代替するように並んでいる様子がみられます。
そのため研究者たちは、歯の起源は外側の皮歯が変化したものである可能性が高いと結論しています。
他の体の骨とは違って歯に抜け変わる仕組みがあるのも、皮歯だった時代の名残なのかもしれません。
一方で、皮歯と歯の内部構造の違いについては、あまり詳しく研究されていませんでした。
サメやエイの表面を覆う皮歯とサメなどの口内の歯は異なる内部構造をしています。
具体的には、体の表面にある歯は単純な構造によって作られていますが、口内の歯はさまざまな方向の圧力に耐えるために、複数の層からなる複雑な構造をしています。
そのためウロコから歯に変化する中間の化石があるように、皮歯に分類されながらも歯のような内部構造をもつ器官を持つ存在がいてもおかしくありません。