赤外線の検出で系外惑星の「直接撮影」に成功!
JWSTにより撮影されたのは、地球からケンタウルス座の方角に約355光年離れた場所にある系外惑星「HIP 65426 b」です。
HIP 65426 bは、2017年7月6日に、チリ・パラナル天文台の超大型望遠鏡VLTにより発見され、主星である「HIP 65426」の周りを公転していることがわかっています。
分析の結果、HIP 65426 bは、質量が木星の6〜12倍に達する「巨大ガス惑星」であることが判明しました。
しかも、惑星としては非常に若く、誕生してからまだ1500万〜2000万年しか経っていません。
加えて、主星からは100AU(天文単位:1AU=約1億5000万キロで、地球・太陽間の距離に相当)も離れており、主星の光から惑星像を分離しやすい位置にあります。
こうした特徴から、HIP 65426 bは比較的観測しやすく、JWSTの撮影能力を試すのに適した惑星と判断されました。
NASAの研究チームは今回、欧州宇宙機関(ESA)とカナダ宇宙局(CSA)の協力の元、JWSTによるHIP 65426 bの直接撮影を試みました。
JWSTが行ったのは、系外惑星が発する赤外線を捉えることです。
2017年のVLTのように、地上からの撮影ですと、地球の大気層が赤外線を吸収してしまうため、系外惑星を鮮明に捉えることはできません。
そこでチームは、2022年の7月17日と7月30日に、JWSTに搭載されている「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線装置(MIRI)」を用いて、HIP 65426 bの赤外線撮影を実施しました。
それぞれ2種類ずつのフィルターを使い、波長のことなる4つの赤外線を撮影して得られた画像がこちらです。
左2つが近赤外線カメラ(NIRCam)、右2つが中間赤外線装置(MIRI)による撮影です。
画像の色は、赤外線の波長に応じて着色されており、白星マークは、主星のHIP 65426の位置を示しています。
左2つの画像は上下にブレたようになっていますが、これはNIRCamの特性によるものとのこと。
また、HIP 65426 bの光度は、主星に比べて非常に暗く、近赤外線では1万分の1以下、中間赤外線でも数千分の1以下の明るさしかありません。
そのためチームは、コロナグラフを用いて主星からの光を遮ってから、撮影を行いました。
コロナグラフとは、太陽面からの明るい光を遮って、弱い光のコロナを観測できるように設計された装置です。
本研究の成果について、研究主任の一人で、米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UC Santa Cruz)の天文学者であるアーリン・カーター(Aarynn Carter)氏は「太陽系外惑星を直接撮影する装置として、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がいかに強力かを実証しました」と述べています。
今回の観測結果は、HIP 65426 bのより詳しい質量や大気の組成、惑星の形成プロセスなど、いまだ未解決の問題を明らかにする上で、非常に役立つと考えられています。
JWSTは、ハッブル宇宙望遠鏡の後継として、2021年12月25日に打ち上げられたばかり。
しかし、この短期間の間に、すでに多くの驚くべき天文画像を撮影しています。
JWSTの快進撃は、今後もまだまだ続きそうです。