世界最古の「顎を持つ生物」の化石と判明!
有顎脊椎動物ー顎口(がっこう)類ともいうーは、私たちヒトを含め、現生する脊椎動物の99.8%以上を占めています。
その最初の祖先は、約4億5000万年前に出現したと推測されていますが、当時の化石証拠が少ないため、”顎を持つ脊椎動物の進化史”を正確に理解することは困難でした。
現時点で、最古の有顎脊椎動物の証拠は、約4億2500万〜2300万年前の魚類のものです。
しかし、研究チームは今回、中国南部の貴州省・石阡(せきせん)県にある古生代の地層から、その記録を更新する魚類化石を発見しました。
チームは、小さな骨断片を復元する中で、科学的に新種となる古代魚の特定に成功しています。
本種は、貴州省のユネスコ世界遺産に登録されている「梵浄山(ぼんじょうさん Fanjingshan)」にちなみ、「ファンジンシャニア・レノヴァタ(Fanjingshania renovata)」と命名されました。
こちらは、その復元図です。
サイズは非常に小さく、全長10センチもないといいます。
![新種「ファンジンシャニア・レノヴァタ(Fanjingshania renovata)」の復元図](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/ancient-shark-from-chi-900x506.jpeg)
骨断片はほぼ全身にわたって発見されており、約20本の歯も回収されました。
歯の分析から、約4億3900万〜3600万年前のシルル紀前期に生息していたことが判明しています。
解剖学的には、「棘魚類(きょくぎょるい、Acanthodii)」と呼ばれる、約4億年前のシルル紀に出現し、続くデボン紀に繁栄した原始的な魚類グループに最も近いことがわかりました。
棘魚類は、最初にアゴを持った生物とされ、サメやエイと同じ軟骨性の背骨を有していましたが、頭蓋やエラには、硬骨魚類に近い特徴があったようです。
新種の骨格を調べたところ、肩帯の部分など、軟骨魚類に見られる特徴がありましたが、一方で、ヒレの周りは硬骨でできた”鎧”をまとっていました。
![顎を持った最古の生物と判明](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/ancient-shark-from-chi-1-900x484.jpeg)
さらに、20本の歯の分析から、新種はアーチ状にわん曲した顎の縁を持っていたことが明らかになっています。
生息年代も踏まえると、この研究結果は、新種が「顎を持つ最古の生物」であることを示すものです。
CASの古生物学者で、研究主任のツー・ミン(Zhu Min)氏は、次のように話します。
「本研究の成果は、顎を持つ魚類が、デボン紀(約4億1600万〜3億5920万年前)の化石記録に広く現れる前のシルル紀前期に多様化したという学説に対する、これまでで最も強力な証拠となるでしょう。
今回の新しいデータにより、ファンジンシャニアを最初期の有顎脊椎動物の系統図に位置づけることができました。
これは、顎を持つ脊椎動物の進化のプロセスを理解するために、非常に重要な情報となります」
また、ファンジンシャニアの存在は、人体に見られる多くの構造の出現を約4億4000万年前まで遡り、”魚から人へ”の進化におけるいくつかのギャップを埋めるのに役立つかもしれません。
私たちが食物をしっかり噛んで食べられるのは、こうした先輩たちの長い長い努力があったおかげなのです。