ジュラシック・コーストで見つかった新種魚竜
イングランド南部のドーセット州、全長約150キロメートルに及ぶ「ジュラシック・コースト」は、ユネスコ世界遺産にも登録されている化石の宝庫です。
19世紀の有名な女性化石ハンター、メアリー・アニングの時代から現在まで、この地では無数の魚竜や恐竜の化石が掘り出されてきました。
その中でも今回発見された「ソードドラゴン(Xiphodracon goldencapensis)」は、特別な存在です。
命名にあたっては、「剣(xiphos)」と「ドラゴン(dracon)」というギリシャ語・ラテン語を組み合わせ、「ソードドラゴン」という名前が与えられました。
魚竜は英語圏で“シードラゴン(海の竜)”と呼ばれてきた伝統も反映されています。
【発見された魚竜の化石がこちら】
この化石は2001年、地元の化石コレクターであるクリス・ムーア氏がドーセット州ゴールデン・キャップ付近で発見したものです。
全長およそ3メートル(イルカほどの大きさ)で、骨格は三次元的にほぼ完全な形で保存されていました。
頭蓋骨にはサッカーボールほどの巨大な眼窩、そして剣のように鋭く伸びた口吻(=くちばし)が特徴的です。
特に、鼻の近くにある「涙骨」がフォーク状に変形しているという、これまでどの魚竜にも見られなかったユニークな構造も確認されました。
さらに驚くべきことに、化石の腹部には“最後の食事”の痕跡まで残されていました。
胃のあたりには魚やイカと思われる骨片が保存されており、ソードドラゴンが当時どんな獲物を追っていたのかを現代に伝えています。
研究者は2016年に初めてこの化石を目にしたときの驚きを「見た瞬間にただならぬ存在だと分かりましたが、これほど進化史の空白を埋める存在だとは思いませんでした」と語っています。