進化の「空白」を埋める失われたピースか
「ソードドラゴン」が生きていたのは約1億9300万~1億8400万年前、ジュラ紀前期の「プリンスバッキアン期」と呼ばれる時代です。
この時期の魚竜化石は極めて希少で、科学者たちは長らくこの“空白”を埋める化石を探し続けてきました。
それはなぜでしょうか?
実は、プリンスバッキアン期には魚竜の多様性が大きく変化する“動物群の交代”が起こっていたことがわかっています。
それまで主流だった魚竜の科が絶滅し、新たなグループが台頭したものの、その詳しい時期や進化の道筋は化石記録が乏しいため、はっきりしませんでした。
今回のソードドラゴンは、これまで知られているどの魚竜とも異なる特徴を持ち、後の時代に現れる種により近いことから、“動物群の交代”がこれまで考えられていたよりも早く始まっていたことを示しています。
また、頭骨の損傷や四肢骨・歯の異常変形など、生前にケガや病気を抱えていた証拠も残っていました。
さらに頭骨には巨大な咬み跡があり、同じ魚竜の仲間でより大型の捕食者に襲われて命を落とした可能性も示唆されています。
こうした細部の情報からは、当時の海が決して穏やかな楽園ではなく、強者と弱者が生存をかけてせめぎ合う“厳しい世界”だったことがうかがえます。