黒くなったのではなく、元から黒い個体が生き残った?
ブラコ氏とオリザオラ氏は、この結果について、「チェルノブイリの汚染区域にいた黒いカエルが、放射能に反応して急速に適応した可能性を示している」と説明します。
このシナリオによると、事故当時は少数派だった「黒いカエル」が、メラニンの保護作用によって、大多数を占める黄緑色のカエルより有利な立場に置かれたと推測されます。
ですから、もともと黄緑色のカエルが、放射能に合わせて黒く変色したのではありません。
チェルノブイリでは、元から黒かったカエルが一人勝ちし、繁殖を進めて、同色の個体が増え続けたと考えられるのです。
事故後すでに10世代以上が経過していますが、チェルノブイリでは皮肉にも立場が逆転し、今では黒いカエルが主流となったのでしょう。
これは、ダーウィン以来の自然選択の典型的な実例と言えます。
同じ例で最も有名なのは、19世紀後半のヨーロッパ工業都市における、暗色のガ(蛾)の増加でしょう。
工場の煤煙により、周辺の樹木が黒ずんだことで、白い個体は目立つために捕食されやすく、暗色の個体は環境に溶け込んで、食べられなくなったのです。
19世紀半ばから50年間で、同地の暗色のガの数は2%から98%にまで激増したといいます。
原因は違えど、チェルノブイリのイースタンツリーフロッグにも、これと同じ現象が起こったようです。
ブラコ氏とオリザオラ氏は、本研究の成果について、「放射能汚染の影響を受けた環境におけるメラニンの保護的役割をよりよく理解するための第一歩となるでしょう」と述べました。