アゴを外して突出できる深海ザメ
アゴを外して突出できる深海ザメ / Credit: Fascinating(Twitter, 2022)
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「まるでエイリアン!」アゴと歯茎が分離して突出する深海ザメがSNSで話題沸騰中!

2022.10.18 Tuesday

「深海は、火星の表面より分かっていることが少ない」とは、どこかで聞いたことがあるかもしれません。

それほど深海は謎に包まれた世界であり、創作上のモンスターを彷彿とさせるような奇抜な能力をもった生物もたくさん潜んでいます。

その中で今、ある深海生物がアメリカのTwitter上で「マーベルコミックに出てくるヴェノムのようだ!」と話題になっています。

ある生物とは、カラスザメ科の一種「ワニグチツノザメ(Viper dogfish)」で、彼らは驚くことに、上アゴから口内がガコッと外れて、エイリアンのように飛び出すというトンデモ能力を持っているのです。

まさに、アゴの外れるような話ではありませんか?

しかも、ワニグチツノザメは、日本の海で最初に発見された深海ザメなのです。

Dining out! Elusive black shark that EJECTS its jaws out of its mouth looks like Marvel’s Venom’ because of its extendable jaw and needle-like teeth https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-11316357/Elusive-black-shark-EJECTS-jaws-mouth-looks-like-Marvels-Venom.html Rarely seen viper dogfish caught in Taiwan(2018) https://www.earthtouchnews.com/oceans/sharks/rarely-seen-viper-dogfish-caught-in-taiwan/

日本の海で初発見された「ワニグチツノザメ」とは?

ワニグチツノザメは1986年、愛知県の底引き網漁船「精漁丸」によって、和歌山県・潮岬(しおのみさき)の水深330メートルから、世界で初めて発見されました。

その個体は、全長22センチほどの未成熟のオスで、タイプ標本として指定されています。

その後の科学的な調査で、カラスザメ科の一種と特定され、学名は「トリゴノグナトゥス・カベヤイ(Trigonognathus kabeyai)」と命名されました。

属名のトリゴノグナトゥスは、ギリシア語の「トリゴノン(trigonon :三角形)」と「グナトゥス(gnathus:アゴ)」を組み合わせたもので、種小名のカベヤイは、当時、精漁丸の船長だった壁谷(かべや)氏に由来します。

円筒形で真っ黒い胴体を持ち、青いビー玉のような瞳と、釣り針のように尖った歯が特徴的で、腹部には深海生物によく見られる発光器を無数に備えています。

ワニグチツノザメは今のところ、日本、台湾、ハワイの沿岸部でしか見つかっていません。

2018年には、台湾の東河郷(とうがきょう)付近で、一挙に5匹のワニグチツノザメが捕獲され、大きな話題となりました。

(ただし、うち4匹はすでに死亡しており、あとの1匹も水槽内ですぐに死んでいる)

日中は、水深300〜500メートルの深海に生息しているため、直接の目撃例はほぼ皆無ですが、夜になると、水深150メートル付近まで上がってくることがわかっています。

平均的なサイズは、20センチを超える程度で、最大でも50センチほどと、大きなサメではありません。

しかし、その最大の特徴は、飛び出す上アゴです。

解剖学的な調査により、ワニグチツノザメは、口を大きく開けて上アゴを外し、それを前方に突出させられることが明らかになっています。

まるで、エイリアンの飛び出す口のようです。

研究者によると、ワニグチツノザメは、腹部の発光器をチラつかせて小さな獲物をおびき寄せ、口元に近寄ってきたところで、アゴを飛ばして捕食すると考えられています。

こちらは、ワニグチツノザメの捕食のイメージ映像です。

ワニグチツノザメの捕食イメージ
ワニグチツノザメの捕食イメージ / Credit: Discovery – Glow-in-the-Dark Sharks(youtube, 2015)

ここ数年はワニグチツノザメの捕獲情報もありませんが、Twitterアカウント「Fascinating」が、本種の画像をシェアしたところ、またたく間に多くの注目がありました。

ユーザーからは、「ヴェノムに似ている」「こんなグロテスクな生き物を誰が作ったのか」「これで海に対する恐怖がさらに増した」といった声が寄せられています。

また、ワニグチツノザメと同じような能力を持つ深海ザメとして、「ミツクリザメ(Goblin shark)」の捕食シーンを紹介している人もいました。

ミツクリザメは、日本を含む世界各地の深海に分布し、英名でゴブリン・シャークと呼ばれるように、とても不気味な顔をしています。

細長く伸びた吻(ふん)で獲物を探し出し、その下側のアゴを折り畳んだ袋を広げるように突出させて、獲物を丸呑みします。

このように、真っ暗な深海で生き延びるには、効率的に獲物を捕らえるための工夫が必要不可欠です。

フィクション顔負けのモンスターたちの存在は、「深海」という極端な環境でこそ可能になったのでしょう。

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