移植で合計100年以上機能している「百歳超えの肝臓」が25個もあると判明!
近年の長寿研究により、実年齢と臓器などの生物学的年齢が必ずしも一致しないことが明らかになってきました。
たとえば実年齢が35歳であっても、肌年齢が20代後半、腎臓年齢が60代後半、聴覚の年齢は40代前半と、体のパーツごとに老化の速度は大きく異なる例が数多く確認されています。
車でも運転の仕方や車種によって部品の摩耗速度が違うように、人間もまたライフスタイルや受け継いだ遺伝子など、さまざまな要因によって臓器の年齢が大きく違ってくるからです。
このようなアンバランスは臓器移植において有利不利、どちらにも大きく影響します。
全体としてみれば、臓器提供者の実年齢が若いほうが移植の成功につながりやすいのは事実です。
実際、心臓や膵臓の移植成功率は提供者の年齢が40歳を過ぎると低下していきます。
一方、肺にかんしては提供者の年齢が65歳まででであれば、成功率に大きな差はありません。
さらに角膜に至っては、提供者の年齢は移植の成功率にほぼ無関係となっています。
では肝臓はどうでしょうか?
最近の研究によれば、肝臓を含むいくつかの臓器には寿命の上限が存在するかどうかが疑わしいとするデータが得られています。
たとえば2008年にトルコで行われた移植では、肝臓の提供者となったのは93歳の高齢女性だったものの、患者は順調に回復し、6年後には患者の体内に移植された肝臓の累計年齢が100歳を超えました。
肝臓は外科手術によって3分の2が切り取られても、1年後にはほぼ元のサイズに戻るなど、優れた再生能力が知られています。
このような再生能力がある臓器は、肝臓以外に存在しません。
もし肝臓の寿命に「上限」が無いのならば、このようなケースは他にも存在しているハズです。
そこで今回、テキサス大学の研究者たちは1990年から2022年の間に実施された25万件以上の肝臓移植結果を調査し、移植された肝臓の累積年齢を追跡してみることにしました。
すると累積年齢が100歳を超えた「1世紀肝臓」が25個も存在したことが判明。
最高齢の肝臓の年齢は108歳にも達していました。
また「1世紀肝臓」の提供者の平均死亡年齢は84.7歳であったにもかかわらず、全ての肝臓が少なくとも10年以上、患者の体内に存在していました。
一方「非1世紀肝臓」の場合、提供者の平均死亡年齢は38.5歳でしたが、移植された肝臓が10年後に存在している確率は60%に過ぎませんでした。
この結果は、条件によっては、高齢者から提供された肝臓のほうが、若い人から提供された肝臓よりも、移植成功率が高い場合があることを示します。
そうなると気になるのが、その「条件」の内容になります。
「1世紀肝臓」と「非1世紀肝臓」では、何が違っていたのでしょうか?