バルト海に浮かぶ「星月夜」、緑光の正体とは?
北ヨーロッパに位置するバルト海は、スカンディナビア半島とヨーロッパ大陸に囲まれた縦長の海域です。
今回、NASAが公開した画像は、スウェーデン南東部のバルト海に浮かぶ同国最大の島、ゴットランド(Gotland)島で撮影されました。
NASAの説明によると、この画像は、ゴッドランド島周囲の海を写しており、暗い水面に浮かぶ緑光は「植物プランクトンの大群」であるといいます。
植物プランクトンは、海洋におけるほぼ全ての食物連鎖の基礎をなす微小生物です。
一つ一つは、小さすぎて肉眼で識別することはできませんが、群れで集まれば、彼らの持つ葉緑素によって水面が緑色に染まって見えることがあります。
海面や湖面で生活する植物プランクトンは、光合成によって二酸化炭素を取り込みつつ、酸素を生成し、地球上の酸素の維持に大きな役割を果たしています。
こうした植物プランクトンは、深層海流が太陽光の差し込む海域(有光層)に栄養分を運んでくると、個体数が爆発的に増加し、(画像内のように)大量発生するのです。
ここでは、ゴットランド島を取り巻く青海原と白波の渦、そして植物プランクトンの発する緑が、絶妙なバランスで織り合わさっています。
それはまるで、ゴッホの名画『星月夜』のタッチを自然が模倣したかのようです。
当の『星月夜』は1889年6月、フランス南部サン=レミ=ド=プロヴァンスにあるサン=ポール・ド・モゾル修道院の精神病院で、療養中のゴッホにより描かれました。
見比べてみると、確かに、バルト海の衛星画像は『星月夜』によく似た印象をたたえています。
一方で、1999年4月15日に打ち上げられたランドサット7号は、絵画のような景色を撮影するだけでなく、多岐にわたる観測をこなしています。
たとえば、南極の氷河の速度を測定したり、アメリカ西部の農業地域の水利用の状況を監視したり、アマゾン熱帯雨林での森林破壊を発見するなど、多くの仕事を担っています。
これらのデータは、私たちが地球の変化を正確に把握し、その対処を講じるのに非常に役立っています。