17世紀オーストリア貴族の赤ちゃんミイラ、死因が「日光不足」と判明!
17世紀オーストリア貴族の赤ちゃんミイラ、死因が「日光不足」と判明! / Credit: Andreas G. Nerlich et al., Frontiers in Medicine(2022)
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【死因は日光不足】 オーストリア伯爵家の地下で見つかった「赤ちゃんミイラ」の謎 (2/2)

2022.10.29 17:00:55 Saturday

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貴族特有の習慣が「日光不足」を招いていた?

研究チームは2022年に、男児の死因を解明するべく、CTスキャンを用いたミイラのバーチャル解剖を実施。

その結果、肋骨に栄養失調、それも「ビタミンD欠乏症」の典型的なパターンである奇形の痕跡が発見されました。

この症状は「くる病」と呼ばれ、ビタミンDの不足により、骨の石灰化が阻害され、強度が弱くなる病気です。

くる病はよく、足の骨のわん曲としてあらわれますが、男児の足に異常はありませんでした。

加えて、男児の肺を見ると、ビタミンD欠乏症の乳児に見られる「致死性の肺炎」の兆候も見つかりました。

くる病は必ずしも致命的な病気ではないため、こちらが直接的な死因となったようです。

CTスキャンによる遺骨の分析(肋骨に奇形の痕跡が)
CTスキャンによる遺骨の分析(肋骨に奇形の痕跡が) / Credit: Andreas G. Nerlich et al., Frontiers in Medicine(2022)

脂肪組織の分析から、この男児は、同年齢の幼児と比べると、かなり肥満気味であることが判明しました。

そのことから、(お乳など)栄養源の摂取は十分にできていたと思われます。

ところが問題は、貴族生活に特有の「日光不足」にあったようでした。

ビタミンDは、食べ物から十分量を摂取できるものではなく、日光の紫外線を浴びることで、自然に皮膚上で産生されます。

しかし、当時のヨーロッパ貴族社会において、肌の白さは高貴さの証であり、貴族たちは陶器のような肌の白さを保つために、積極的に日光を避けていました

その貴族ならではの習慣が、皮肉にも、小さな命を死に追いやってしまったのです。

その後、19世紀に入り、くる病が西欧で大流行した際に、ようやく「骨の形成に日光浴が重要である」ことが理解されています。

手指のシワや爪まで細かく残されている
手指のシワや爪まで細かく残されている / Credit: Andreas G. Nerlich et al., Frontiers in Medicine(2022)

このように、日光不足によるビタミンD欠乏症は、過去の病気かと思いきや、実はそうでもありません。

特に昨今は、仕事も趣味も屋内でできることが増えたため、現代人の日光不足が懸念されています。

南オーストラリア大学(UniSA)の最近の研究では、オーストラリア人の3人に1人が日光不足によるビタミンD欠乏症にかかっていることが判明。

さらに、ビタミンD不足が早期死亡リスクを高めている強い証拠も得られました(Annals of Internal Medicine, 2022)。

ビタミンDの不足は、健康な成人でも、筋力の低下や骨の痛みを引き起こすことがわかっています。

心身ともに健康でいるためにも、1日1回は陽に当たるよう心がけたいところです。

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