過去に発生した巨大太陽嵐「ミヤケ・イベント」
2012年、日本・名古屋大学に所属する三宅芙沙(みやけ ふさ)氏ら研究チームは、樹木年輪を調査することで、過去に巨大太陽嵐が発生していたことを発見しました。
太陽フレアによって高エネルギーの放射線が大気圏上層に到達すると、窒素原子が放射性炭素(C14)に変化します。
このC14は大気や堆積物、人間、動物だけでなく植物にも取り込まれます。
つまり樹木年輪に含まれるC14の量を調べることで、該当する年の太陽嵐の有無やその規模が分かるというわけです。
![名古屋大学太陽地球環境研究所の三宅芙沙氏と増田公明氏](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2022/10/p_highlights_pasttothefuture01.jpg)
三宅氏は当時の研究により、西暦775年にC14濃度が急激に増加していたことを見つけ、この時に特殊な巨大太陽嵐が発生していたと結論づけました。
この方法と発見は考古学者たちにとって革新的であり、ポープ氏は同様の方法で発見された特殊な巨大太陽嵐の事例を「ミヤケ・イベント」と呼んでいます。
では、もっと多くの樹木年輪を調査することで、別の「ミヤケ・イベント」を発見できるでしょうか?
年輪年代学では、別々の樹木であっても、同じ地域・時代に成長していれば年輪パターンが類似することが知られています。
つまり、さまざまな時代の樹木の共通部分を見つけて、つなぎ合わせるなら、1本1本の寿命は短くとも、何千年にもわたる「樹木年輪の記録」が作れます。
現在では、遺跡から発見された古い木材を活用することで、過去1万3000年間の年輪記録を確認できます。
そして三宅氏による最初のミヤケ・イベント発見後、多くの研究チームが、上記の年輪記録を利用してミヤケ・イベントの探索を行ってきました。
![将来、ミヤケ・イベントが発生するなら地球は壊滅状態になるかも](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2022/10/776c18f609a897f234657680f4f68a47-900x600.jpg)
その結果、西暦775年以外にも、西暦993年、紀元前663年、紀元前5259年、紀元前5410年、紀元前7176年にミヤケ・イベントが発生していたと判明。
過去1万年間に合計6回の巨大太陽嵐が発生していたのです。
1000~2000年に1回、ランダムでミヤケ・イベントが発生していたことになります。
仮に現代でミヤケ・イベントが発生すれば、電子機器や通信システム、人工衛星は壊滅するでしょう。
ミヤケ・イベントが発生する次のタイミングを推測して防衛するためには、ミヤケ・イベントの原因を明らかにしなければいけません。
科学者たちの予想どおり、やはり大規模な太陽フレア「スーパーフレア」が原因なのでしょうか?