「性風俗レビュー」を利用して全国規模の性接触ネットワークを解析
社会的ネットワークは、人間社会を理解する上で重要な要素です。
そのため昔から「映画の共演者」や「研究者の共著関係」などさまざまな社会的ネットワークが調査されており、近年になってからはTwitterやFacebookを用いたより大規模な交友関係の調査が行われるようになってきました。
しかし性的接触のネットワークについては、プライバシーなどの諸問題により、実態は謎に包まれていました。
そこで今回、静岡大学の研究者たちは、性風俗のレビューサイトに書き込まれた情報をもとに、性風俗産業(ソープランド)における男性顧客と女性セックスワーカーたちの、全国規模の性接触ネットワークを構築することにしました。
「性風俗のレビューサイト」が情報源と言うと、不安になる人もいるかもしれません。
しかし情報源となるレビューサイトでは、書き込んだ人物を見分けるハンドルネームが使われており、書き込んだ本人が訪れた性風俗店の場所や一緒に過ごした女性セックスワーカーについての情報を時系列に沿って追跡することが可能でした。
またレビューとして書き込まれた情報は膨大であり、全国に1185件あるとされる「ソープランド」の66%をカバーするものとなっていました。
そのため研究者たちは情報源の信頼性と全体の情報量が、全国規模の性的接触ネットワークを作成するのに十分であると判断し、研究を進めていきました。
結果、上の図のような、詳細なネットワークを構成することに成功します。
図では円の大きさが県ごとのレビュー数であり、線の太さがレビューを書いた人々が県をまたいだソープランド遠征をどれだけ行っているかを示しています。
たとえば図では「東京」と「神奈川」が太い線で繋がれていますが、これは東京(または神奈川)のソープランドをレビューした人の多くが、神奈川県(または東京)にも遠征して神奈川県のソープランドのレビューを行っていることを示します。
また図では、ソープランドのレビュー数は東京が最も多く、次いで神奈川、兵庫、福岡と人口規模が上位の県が続いています。
(※都道府県のなかには条例でソープランドを禁止している所や存在しないところもあります)
また東京、神奈川、埼玉、千葉のように、比較的近い県ではリンクが強く、性的接触ネットワークは隣接県への遠征が盛んに行われている実態が浮き彫りになりました。
一方「東京と北海道」や「北海道と福岡」のリンクのように、遠隔地にもかかわらず比較的強いリンクを形成しているケースも存在しました。
この結果は、一部のレビュワーの中には、長距離の遠征を行っている人々が存在することを示しています。
さらに興味深いことに、石川県(人口33位)や和歌山県(人口40位)、香川県(人口39位)など人口規模が比較的小さいにもかかわらず、多くのレビューが書かれていた県が存在していました。
(※他にも滋賀県や岐阜県なども、人口規模に比べて多くの性風俗レビューが書かれていました。これらの県には、有力な風俗街があることが知られています)
これらの県は東京や神奈川ほどではないものの、ネットワーク上の重要なハブとして機能しており、全国から多くの遠征者を受け入れていることを示しています。
しかしより興味深い事実は、レビュワーと女性セックスワーカーの間のリンクにありました。