育児ストレスが原因で子どもを食べていた⁈
シクリッドはスズキ目シクリッド科に属するグループで、中央アメリカ〜南アメリカ、マダガスカルを含むアフリカ、そして中東〜南アジアと広く分布します。
淡水域と汽水域に生息し、少なくとも1300種以上が確認されています。
シクリッドはかなり気性が荒く、他種の魚と混泳させると食い散らかす危険性があるため、注意が必要です。
また繁殖形態がユニークなことで知られ、シクリッドの多くはメスが受精卵を口の中に入れて口内で孵化させ、2週間ほど稚魚を保育します。
CMUの生物学者であるジェイク・サヴェッキ(Jake Sawecki)氏とピーター・ダイクストラ(Peter Dijkstra)氏は、この繁殖形態をより詳しく調べることにしました。
本研究では、シクリッド科の「アスタトティラピア・ブルトニィ(Astatotilapia burtoni)」のメス80匹を対象としました。
チームは実験室の水槽内で、メスの産んだ卵にオスが精子を噴きかけて受精させた後、メスがこれらの受精卵を口の中にしまい込む様子を確認しています。
その後、メスは約2週間も硬く口を閉ざしたまま、卵を口内で守り続けていました。
しかもこの間、メスは通常の狩りや食事が一切できなくなります。
観察を続けていると、メスが明らかにストレスを感じている行動を示すようになりました。
チームが血液サンプルを調べたところ、ほとんどのメスで「酸化ストレス(細胞内に有害な化学物質が生成される)」のレベルが高くなっており、さらに、より多くのストレス行動を示した個体ほど、血中のストレスホルモンが多くなっていたのです。
口内の子どもの40%を食べていた!
そして最大の注目ポイントは、これらのメスが口内で孵化した子どもを食べていることでした。
調査の結果、対象としたメスの93%が少なくとも一部の子どもを食べており、平均して口内の約40%の子を食べていることが判明しています。
特に、ストレス行動の多かったメスほど、より多くの子どもを食べる傾向がありました。
つまり、シクリッドの母親たちは、育児ストレスが原因で子どもを食べていたのです。
では、産んだ子を食べることにメリットはあるのでしょうか?