冬眠中のツキノワグマは筋肉の分解・合成を抑制している
クマやリス、ハムスターなどの冬眠動物は、半年間にも及ぶ長期の不活動・栄養不良状態にあっても、身体機能を維持できることで知られてきました。
そこで宮崎氏ら研究チームは、同じく冬眠動物であるツキノワグマを対象に、どのように筋肉の衰えを防止しているのか調査することにしました。
冬眠期のツキノワグマ8頭の筋肉を採取し、同一個体の活動期との比較分析を行ったのです。
その結果、筋肉のサイズや遅筋・速筋の割合に変化がなく、冬眠中でも全く衰えていないと判明。
そして冬眠中の骨格筋では、「タンパク質を作る」「タンパク質を壊す」という命令系統の両者が顕著に抑制されていることも分かりました。
また筋肉内で「酸素を使いながら脂質・糖質からエネルギーを取り出す」のに関係する遺伝子発現や酵素活性も顕著に抑制されていました。
つまりツキノワグマは、冬眠期に筋肉を「省エネモード」に変化させることで筋タンパク質代謝(合成と分解)を下げ、結果的に筋肉量を維持させていたのです。
現段階では、この省エネモードのスイッチが何なのか特定できていません。
もし今後の研究で解明されるなら、この省エネモードを人間の筋肉に適用する「人工冬眠」が可能になるかもしれません。