冬眠中のツキノワグマは筋肉が衰えない
冬眠中のツキノワグマは筋肉が衰えない / Credit:Canva
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冬眠中のクマは「筋肉の省エネモード」で身体が全く衰えなかった

2022.12.12 Monday

「使わない筋肉は衰える」

この普遍の原理は、高齢者や怪我をしたスポーツ選手、宇宙飛行士たちを悩ませてきました。

一方で冬眠中のクマなどの動物はずっと寝て過ごしていても身体を維持できることが知られています。

この事実について広島大学大学院医系科学研究科に所属する宮﨑充功氏ら研究チームは、冬眠中のツキノワグマが省エネモードによって筋肉の衰えを防止していると発表しました。

その省エネモードでは、筋肉の分解と合成の両方が抑制されているとのこと。

研究の詳細は、2022年11月16日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

ツキノワグマは冬眠期に筋肉を省エネモードに変化させることで 筋肉の衰えを防止していることを発見 (PDF) https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/221125_pr2.pdf
Regulation of protein and oxidative energy metabolism are down-regulated in the skeletal muscles of Asiatic black bears during hibernation https://www.nature.com/articles/s41598-022-24251-0

「使わない筋肉の維持」がもたらす未来

筋肉は使えば増大するが、使わなければ衰える
筋肉は使えば増大するが、使わなければ衰える / Credit:宮﨑充功(広島大学)_ツキノワグマは冬眠期に筋肉を省エネモードに変化させることで筋肉の衰えを防止していることを発見 (PDF)

骨格筋(体を動かす筋肉)は運動やトレーニングによって、使えば使うほど、強く大きくなります。

しかし、怪我や病気などが原因で筋肉を使わなくなると、すぐに弱く小さくなります。

つまりスポーツ選手は現役でいたい限り、ハードなトレーニングを休まずに続けなければいけません。

今の筋肉を維持するには、今の運動量や負荷を維持しなければいけない
今の筋肉を維持するには、今の運動量や負荷を維持しなければいけない / Credit:Canva

筋肉だけを見ても、「1年間休息してすぐに元のパフォーマンスを取り戻す」のは、ありえないのです。

このような筋肉の衰えは、骨折で安静にしていた高齢者が一気に歩けなくなるなどの問題を生んできました。

さらに未来の科学技術さえも阻むものともなっています。

例えば、宇宙飛行士がそうであるように、重力の小さい星と地球を行き来したり、どちらかで一時的に生活したりするためには、筋力の維持が必須です。

未来の「人工冬眠」には、筋肉を維持が不可欠
未来の「人工冬眠」には、筋肉を維持が不可欠 / Credit:Canva

また人工冬眠技術を確立させて、「新たな救命治療」や「果てしない宇宙の旅」を可能にするためにも、筋肉の衰えに対処しなければいけないでしょう。

これらはまるで夢物語にも思えますが、実はツキノワグマたちの間では、「筋肉の衰え防止」が普通に行われています。

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