スマート牧場のエネルギーを自己充電でまかなう
スマート牧場のエネルギーを牧場内で作り出すために、様々な試みが行われました。
牧場は広く、風力や太陽光など様々なエネルギー資源があります。
しかし、スマート牧場には継続的な電力供給が必要であるため、天候などに左右されるそれらの自然エネルギー以外のエネルギー供給も望まれます。
またウシが常に身に着けるウェアラブル端末に充電が必要となると、どうしても付けはずしの手間や無駄なコストが発生してしまいます。
そんな中、ウォーターフォード工科大学のモヒット・タネジャ氏らが着目したのがウシの運動エネルギーだったのです。
ウシの運動エネルギーを活用しウェアラブル端末を充電
これまでも動物の運動エネルギーを利用したエナジーハーベスタはあったものの、ウシなどの牧場動物の足の細かな動きのエネルギーまでは回収することができずにいました。
そこで今回、モヒット・タネジャ氏らは既存のエナジーハーベスタに磁石と振り子を利用した動力増強メカニズムを組み込むことで、微弱な運動エネルギーを収集することができる仕組みを作り出しました。
この新たなエナジーハーベスタを用いて得たエネルギーはリチウム電池に蓄積され、ウェアラブル端末の電力として使用されます。
このエナジーハーベスタは微細な動きからもエネルギーを回収できるため、放牧下はもちろん放牧されていない状態(エサなどを食べる際の肥育場にいる状態)でもエネルギーを得ることができます。
ウシ自身の動きから今回開発されたエナジーハーベスタを用いて得られた電力は放牧条件で112.3J(ジュール)、肥育場条件で 28.5 Jとなりました。
一方、ウシのウェアラブル端末の消費電力は放牧環境で28.7 J 、肥育環境で13.5 Jであるため、エナジーハーベスタから得られた電力で十分にウェアラブル端末の消費電力を賄えることがわかります。
ウシの体調はウシ自身の動きから得られた運動エネルギーで把握することが可能となったのです。
どんな環境でも充電不要なスマートウォッチができるかも
今回開発されたエナジーハーベスタを人に対して使ってみた結果、軽いジョギング程度の運動によってスマートウォッチの体温測定機能に十分な電力を得られることが分かりました。
現在、充電不要のスマートウォッチにはソーラータイプのものがありますが、どうしても光の量に左右されてしまい屋内照明だけでは充電に時間がかかるといいます。
今後、エナジーハーベスタとソーラー電池を組み合わせたスマートウォッチなどが開発されれば、どんな環境でも充電を気にしなくてよくなるかもしれませんね。