金属で「雪の結晶」構造を再現することに成功!
小学校の理科の授業で、お湯に塩を溶かして冷やすと、塩の結晶が析出する様子を観察したことがあると思います。
この現象は熱い水のほうが冷たい水よりも、塩を多く溶かす能力があることが原因です。
では、実験に使われる水と塩を全て金属に置き換えた場合でも、同じような現象が起こるのでしょうか?
金属も温度が低いときは多くが固体ですが、高温で熱されると溶けて液体になり、さらに超高温の条件では蒸発して気体へと変化します。
もし同じ現象が金属でも起こり得る場合、融解と冷却の過程を経ることで金属の結晶を析出させることが可能なはずです。
そこで今回、ニューサウスウェールズ大学の研究者たちは、熱した液体金属「ガリウム」に、プラチナ・銅・ニッケル・マンガン・銀・ビスマス・スズ・亜鉛・アルミニウムを溶かし込んで、冷却によってどうなるかを確かめることにしました。
ガリウムは室温よりやや高めの温度(29.8℃)で融解する液体金属として知られており、さまざまな金属を融点よりも遥かに低い温度で容易に溶かしてしまう性質を持っています。
そしてお湯と同じく、ガリウムが金属を溶かし込む能力は加熱によって増加し、冷却によって減少するため、金属結晶を析出させることが可能になっています。
実験結果は予想通り、溶媒の役割をしているガリウムが冷えてくると、溶けていた金属たちはそれぞれ独自の結晶パターンを析出させることが判明します。
研究者たちは、このような多様な結晶がうまれる背景には、ガリウムと金属の間に発生する独自の相互作用が影響していると述べています。
ですがより興味深い結果は、亜鉛結晶でみられました。
ニッケルや銀などの場合、ブロック状や棒状など比較的単純な形状の結晶が形成されました。
しかし亜鉛の場合は次のような、雪の結晶に似た綺麗な6六角形をベースにした結晶が現れたのです。
研究者たちは、亜鉛結晶が雪の結晶に似ているのは、結晶化した亜鉛原子と水分子がよく似た配置をしているからだと述べています。
「雪の結晶」が6角形の構造を作るのは、空気に溶け込んでいた水分子が冷却されて析出する際に、周囲の6つの水分子と結びついて結晶構造を作る性質があるからです。
研究では、亜鉛結晶が析出する際にも、核になった亜鉛原子が周囲の6つの亜鉛原子と結びつき結晶を形成する様子が示されています。
水分子と亜鉛原子は全く違う物質ですが、結晶の組み上げかたが似ているため、冷えて析出ときに同じような美しい6角形構造が出現するのです。
研究者たちは、結晶構造が外部からの働きかけなしに自然に組み上がる構造であることが重要だと述べています。
大きな金属を削り出して、今回の亜鉛結晶のような微細な構造を作るのは非常に困難です。しかし結晶化の仕組みを上手く利用できれば、微細なナノレベルの構造を簡単に作り上げることが可能になるでしょう。
研究者たちは今回の研究成果が、ナノサイズの金属加工を実現するための基礎技術になり得ると結論しています。
記事中の図に一部誤りがあったため、修正して再送しております。