つららの中の小さな泡は「空気」ではなく「水」で満たされていると判明!
寒い地方に住んでいる人なら、つららの中には小さな泡が多く含まれていることに気付いていると思います。
ほとんどの人はこの泡を「気泡」だと考えているでしょう。
しかしこれまで「つらら」内部の泡の形成過程や内容物について詳細に研究したものはなく、泡の正体が本当に空気の粒であるかどうかは不明でした。
そこで今回、トロント大学の研究者たちは塩や砂糖などの不純物を溶かした水溶液でつららを作ることで、泡の形成過程を可視化しその中身を調べることにしました。
すると上の図のように、不純物の濃度が増えるにつれつららの内部に層状の構造が現われ、ここに帯のように泡が生じることが判明しました。
不純物の濃度が高くなると泡も多くなって濁りが増え、つららの外観は波打つように変化していきました。
一方、不純物が一切存在しない純水でつくったつららでは泡がほとんど存在せず綺麗な円錐形の外観となったのです。
上の図は層状に生じた泡の帯部分を拡大したもので、つららが大きくなるにつれて年輪のように泡が積み重なっている様子が確認できます。
この結果は、つらら内部の泡が出現するには不純物の存在が必要であることを示します。
さらに驚くべきことに、つららの外観を決定するのは塩や砂糖といった不純物の種類ではなく、不純物の濃度にのみ依存していることが明らかになります。
そのため研究者たちは「つららの外観は化学的な要因ではなく物理的な要因によって決定されている」と結論しました。
次に研究者たちは水に不純物として緑色に光る蛍光色素を溶かし込んだものを用意し、泡の形成過程を可視化すると共に、泡の正体を確かめることにしました。
もし泡の正体が気泡ならば、泡の内部は空洞となり緑に光ることはありません。
しかし実験を行ったところ、周囲の氷は光らなくなった一方で、泡の内部は逆に強く緑色に輝いていることが判明します。
この結果は、泡の中に不純物である蛍光色素が濃縮されて存在している可能性を示します。
そのため研究者たちは、つららの泡が気泡でなく高濃度の不純物が凝縮された溶液であり、凍りつかずに液体の状態になっていると結論し、この泡構造を気泡と区別するために「インクルージョン」と名付けました。
なぜ同じ液体同士なのに、気泡のような構造がつらら内に生まれるのでしょうか?
その理由は、凍結防止のため道路に塩(塩化カルシウム)をまく理由から説明できます。
水に塩を溶かすと通常より凍りつく温度(凝固点)が下がることが知られており、0℃より低い温度にならないと氷になりません。
例えば塩分濃度が22.4%の水溶液では凍りつく温度がマイナス21.2℃まで下がります。
このため雪国では道路に塩化カルシウムをまいて、道路の凍結を防いでいます。
同じような凝固点降下は実験で用いた蛍光色素でも起こることが知られており、つららの泡の内部では不純物濃度が高いために、つらら本体よりも凍りつくのが難しい状態になっています。
ほとんどの自然環境では、つららの本体は凍りついても不純物濃度が高い部分まで凍結させることができません。
そのため、内部に凍結ぜず液体のまま残った部分が形成され、それがまるで気泡の様に見えていたのです。
(※今回の実験も、自然なつららを作るために、水が凍結するギリギリの温度でゆっくり冷やされています)
ただ今回の研究では不純物の存在が、なぜつららの泡や外観を波状にするかは明らかにされませんでした。
研究者たちは今後の解明は、理論家たちに任せたいと述べています。
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