アトピー性皮膚炎の原因となるタンパク質の発見
アトピー性皮膚炎は痒みをともなう皮膚疾患であり、強い痒みは日常生活を送る妨げになっています。
また痒みをかんじた患者の「掻きむしり」は皮膚のバリア機能を低下させて皮膚炎をの悪化させて「痒い➔搔きむしる➔さらに痒くなる」という悪循環を発生させてしまいます。
そのためアトピー性皮膚炎の治療には、ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬などを皮膚に塗り込んだりデュピルマブなどの分子標的薬などを皮膚に注射するなどして、皮膚で起こる炎症を軽減させる戦略がとられてきました。
しかしアトピー性皮膚炎で強い痒みがどんな仕組みで発生するか、その根本的な原因は未解決でした。
そこで今回、富山大学と佐賀大学の研究者たちは遺伝子改変によって人間のアトピー性皮膚炎によくにた病態を引き起こす「アトピーマウス」を作成し、どんな要因が皮膚の炎症や痒みをうみだしているかを調べることにしました。
すると「アトピーマウス」ではペリオスチンと呼ばれるタンパク質が皮膚と血中の両方で過剰に存在していることが確認されました。
また、ペリオスチンは皮膚細胞(の受容体)に結合することで皮膚の炎症を引き起こし、同時に皮下神経(の受容体)に結合することで痒みの伝達を行っていることが判明しました。
この結果は、ペリオスチンがアトピー性皮膚炎で引き起こされる「皮膚の炎症」と「痒みの知覚」の両方に関与していることを示します。
そこで研究者たちは、新たに遺伝子組み換え技術によってペリオスチンの遺伝子を欠損させたマウスを作成してアトピーマウスと交配させてみました。
目的は、生まれつきアトピーになる運命にあるマウスが同時に、生まれつき炎症と痒みを引き起こす元凶となるペリオスチンを欠損させていた場合に、何が起こるかを確かめることでした。
すると非常に興味深い結果が得られました。
通常のアトピーマウスの場合、生後4週間までに顔を掻くような動作を頻繁に行いはじめ、4週以降になるとさらに激しく掻きむしりはじめます。
しかし炎症と痒みの元となるペリオスチン遺伝子を欠損させたアトピーマウスでは、顔の引っ掻き行動が顕著に少なくなっており、痒さに関連する神経活動も大幅に抑制されていました。
この結果は、アトピーマウスの体内で働いているペリオスチンを何らかの方法で抑えることができれば、炎症や痒みといった症状の改善ができることを示します。
ただ人間の場合はマウスと違って気軽に遺伝子組み換えを行うわけにはいきません。
そこで研究者たちは次に、ペリオスチンの機能を阻害するような薬を探索することにしました。
しかし、そんな都合のいい物質が存在するのでしょうか?